量子科学技術研究開発機構 核融合エネルギー部門那珂核融合研究所の「JT-60SA」は、建設開始から12年を経て、いよいよ本運用に入る。本稿では、2019年5月の中央ソレノイドのインストール以降の様子にも触れつつ、総合試験運転中の様子をお伝えしていく。いくつか試験を経て、2021年春から本格的な運用に入るとのことだ。
中央ソレノイド(直径約2m、高さ約7m、重量約100t)のインストール以降は超伝導コイルの冷却効率を高めるためにサーマルシールドと真空断熱を利用するクライオスタットが取り付けられた。容器の全周を囲うように設置され、胴部は2019年9月〜12月にかけて組立が進んだ。また並行してバルブボックスとコイルターミナルの準備も行われれた。これらは冷却系統になり、バルブボックスにはヘリウム流量を調整する極低温バルブと極低温配管を収納したものになる。コイルターミナルは超伝導コイルと常温電源の間に設置される機器だ。
クライオスタットの最終ピースである上部のフタが取り付けられたのは2020年3月。クライオスタットとクライオスタットベースを含む真空容器のサイズは、直径13.4m、高さ15.5mになる。似たサイズ帯としてはITER用TFコイルが全高16.5m、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAのRX-78F00が全高18mである。RX-78F00は発掘されたパーツから現代技術で復元したものになるが、RX-78-2などに搭載される動力源は核融合炉なので、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAに行く予定であれば、現在の核融合研究事情も踏まえて見学すると、楽しいかもしれない(筆者はとても楽しかったです)。
真空容器のリークテストは、Fusion for Energyのレポートによると、軽微なリークが確認されたそうだが、10m×6.6mの巨大な超高真空容器であることからすると、軽微で済んだほうが驚きだだろう。チェックポイントは真空容器260か所、クライオスタット270か所、およびヘリウム配管だ。
関連機器の組み立て完了は2020年10月とある。2020年10月10日からは、超伝導コイルを1時間あたり平均30分の1度ずつ冷却する工程に入り、2か月ほどかけて動作温度である-269℃にまで下げ、中央ソレノイドとトロイダル磁場コイル、平衡磁場コイルが超伝導状態になることを確認されている。ちなみに、JT-60SA様子はJT-60SA COOLDOWNで見ることができ、2020年12月8日時点では真空容器のベーキング過程にあった。
クールダウンと並行して周辺でも作業が進んでいた。手前にはステージの台座が用意されており、正面から見るとした際の本体の姿は徐々に姿は見えなくなっていく。加えて、壁も建設されるため、正面から容器全体を見られる機会は、しばらくないとのことだ。外観の変化を見ると、本体上部にいくつかの小型容器が見える。これが上記したバルブボックスだ。2019年時点よりも周辺の機器据え付けが進んでおり、いくつかポートがアクセス待ち状態だったほか、電源ラインの状態も確認できた。個人的な趣味嗜好になるが、特定空間にみっしり詰まっている度が高まっており、大変よろしいに尽きる。
今後は超伝導コイルの通電試験と真空容器の放電洗浄、プラズマの着火、プラズマを用いた試験と進めて行く。着火のタイミングはとくにリリースされず、式典が2021年4月が予定されており、そのときに正式な点火になると思われる。またJT-60SA本体以外の技術もITER想定であるため、今後は電源施設などもレポートしていく予定だ。