横浜市立大学の研究グループは2日、新型コロナウイルスに感染した人の98%が半年後も再感染を防ぐ可能性が高い抗体(中和抗体)を保持していたと発表した。感染後に回復した376人の中和抗体を調べた。これだけ大人数の調査は国内で初めて。接種が間近いワクチンの効果が少なくとも半年は続く可能性を示す成果として注目される。研究グループは今後、感染1年後の抗体保持の有無も調べるという。
横浜市立大学学術院医学群の山中竹春教授や梁明秀教授、後藤温教授らの研究グループは、今年の2~5月に新型コロナウイルスに感染、回復して約半年経過した20~70代の人を対象に調査協力を呼び掛けたところ617人が応募。10月下旬までに血液を採取できた376人の検体を解析した。内訳は無症状が14人、軽症が266人、中等症が71人、重症が25人で男女ほぼ同数、平均年齢は約50歳だった。
研究グループは独自に開発した精度の高い抗ウイルス抗体検出技術を活用。検体を解析した結果、ウイルス抗原と結合して増殖を妨げる中和抗体を98%の人が保持していた。無症状と軽症の人は97%、中等症と重症の人はいずれも100%だった。さらに、中和抗体の働きの強さを示す抗体活性は、中等症と重症の人の方が軽症の人より強かったという。
新型コロナウイルスが人体内に入るとウイルス表面の突起(スパイクタンパク質)が人体の細胞上のタンパク質(ACE2)にくっついて細胞内に侵入。多様な抗体ができるが、ウイルスの突起にくっついて再感染を防ぐことができる能力があるのが中和抗体だ。
現在各国で開発が進む新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンのいくつかは実用化が近い。米製薬大手ファイザー社がドイツのバイオ企業と共同開発したワクチンは2日に英政府の承認を受け、来週にもワクチン接種が始まる見通しだ。日本政府はこのワクチンを1億2000万回分の供給を受けることで基本合意している。
このようにワクチンへの期待は大きいが、ワクチン投与によって抗体ができても、それがどのくらいの期間保持されるのか、どの程度再感染を阻止できるのか示す詳しいデータはほとんどなかった。また、被験者が少なく、追跡期間が短い研究が多かった。英国の研究では、発症後しばらくはかなりあった中和抗体も2カ月後には急速に減衰したとのデータが示され、ワクチンの効果を懸念する声も出ていた。
記者会見した横浜市大の山中教授は「中和抗体を保持している人はしていない人と比べて再感染するリスクは低い。今回重症度が高い人ほど中和抗体の強さが大きくなる傾向が分かった」「ワクチン開発に一定の期待を持たせるものではないかと考えている」と述べている。その一方で、中和抗体が保持されていても感染リスクがゼロになるわけではないとも指摘している。
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