YouTube Brandcast 2020、2つの新発表あり
Googleは12月3日、これまでオンサイトで開催してきた広告関係者向けのイベント「YouTube Brandcast」をオンラインで開催した。新型コロナウイルスインシデントを受けての対応となるが、YouTubeの主戦場である動画でイベントを配信するというのは、「YouTube Brandcast」としては自然な流れのようにも見える。
今回のイベントではGoogleからYouTubeに関する利用状況が説明されたほか、次のように、1つの新サービスと1つのサービスアップデートが発表された。
- YouTube Select (新サービス)
- YouTubeマストヘッド広告をインプレッション単価制で提供 (単価制の変更)
「YouTube Select」はGoogle Preferredを再構築した新サービスで、エンターテイメント、ゲーム、スポーツ、音楽など15のカテゴリーで質の高いコンテンツに絞った広告配信をさまざまなデバイスおよびアプリに対して行うもの。対象となるカテゴリーは今後増える予定だ。より効果的な広告の配信が可能になるとされている。
YouTubeマストヘッド広告に関しては、2021年から日別単価(CPD)制からインプレッション単価(CPM)制での提供に変更。広告配信回数の上限設定や、テレビ画面を対象とした配信など、柔軟な設定が可能になり対象とするユーザーに効果的にメッセージを届けることが可能になるとされている。
YouTubeに関する調査データから見えてくるモノとは?
ここで、YouTube Brandcast 2020で発表された主な数字をまとめてみよう。
- 2005年にプラットフォームを立ち上げてから15年が経過
- 月間のユーザー利用数:20億人
- 1日当たりの再生時間:10億時間
- 100万人以上の登録者がいる日本のチャンネル:240以上(2020年6月時点)
- アップロードされた国内動画の総時間:80%増加(2019年比較)
- YouTubeの利用が増加したユーザー:74% (他のオンラインプラットフォーム平均の3倍)
- 日本の18〜64歳の月間YouTubeユーザー:6,500万人以上
- テレビでのYouTube視聴者数:1,500万人以上
- テレビでのYouTube視聴比率:110% (2019年6月と2020年6月比較)
- 家族や恋人、友人とテレビでYouTubeを見る割合: 50%
また、好まれる動画が次のようなものに変わったといった説明もあった。
- 在宅時間の活用につながるライフスタイル、ハウツー動画、ラーニング系動画
- ユーザーに役立つ情報やメッセージの発信
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた方々を応援するチャンネル
数値として注目したいのは、GoogleがテレビでYouTubeを視聴するユーザーが増えている点を強調しているところだ。
変化している広告メディアとしてのYouTube
YouTube Brandcast 2020において印象的だったのは、Debbie Weinstein氏が説明した「Google Media Labチームでは今後、デジタルを主体に、テレビを補完とするメディア・プランニングを考えています」というメッセージだ。この発言は、Googleが広告メディアとしてのYouTubeをどのように位置づけているか、またはその位置づけをどのように変化させているかを明確に表している。
現在、企業におけるメディアミックス広告は当たり前の取り組みになっている。キャンペーンはまずテレビCMを優先して制作される。それに対する補完的な広告として、YouTubeなどのデジタルメディア向けの広告が制作される。
Weinstein氏はこうしたこれまでの状況に対し、テレビCMとYouTube CMの効果が同等、またはYouTubeのほうが広告リーチがTVを上回るケースが増えていると指摘。先に挙げたデータを受けてGoogle Media Labチームは今後、デジタルを主体にテレビを補完とするメディア・プランニングを考えているとの発言につながっている。
新型コロナウイルスインシデントを受けて、多くの人々がこれまで以上にインターネットを利用するようになっている。YouTubeの利用が伸びている背景には、こうした社会的な状況や、デジタル技術を活用する人が増えていると見られる。動画が活用されるシーンは年々増えており、広告業界におけるYouTubeのポジションはさらに高まっていくのではないだろうか。