Amazon Web Services(AWS)は11月30日より、年次イベント「re:Invent 2020」をスタートした。今年のre:Inventは新型コロナウイルスの影響で、3週間にわたるバーチャルカンファレンスとなる。12月1日(米国時間)はCEOを務めるAndy Jassy氏による基調講演が行われた。本稿では、その模様をお届けする。
「re:Invent」では毎年、新たな発表が大量に行われるが、今年は12月1日だけで43の発表が行われ、それらのうち、27の新サービスや機能がJassy氏の基調講演で紹介された。
企業の存続に不可欠なreinvent
Jassy氏は、30年前にFortune 500に入っていた企業でも、現在まで存続している企業は少ないとして、企業の存続の難しさを指摘した。そして、企業が存続するには、「reinvent(再発明)が必要だ」と述べた。
Jassy氏は「re:Invent」を行う上で重要なものとして、リーダーシップ、人材、顧客の問題を解決すること、スピード、複雑にしないこと、幅広い機能とツールを備えたプラットフォームなどを挙げた。
「reinventは、もともと社内にいる人たちにとって、自分たちが作ったモノを壊すことにもなり、簡単なことではない。だから、対抗勢力と戦い、一歩踏むこむことができ、reinventに前向きな新しい人材が必要となる。また、われわれはサービスを構築する際、競合他社の動向に合わせるのではなく、顧客の課題を解決することに焦点を合わせている。そして、reinventにはスピードが必要であり、スピードを妨げるものが複雑性だ。複雑性を回避するには、ベンダーロックインにならないよう、パートナーを選ぶ必要がある。加えて、複雑性の回避には、幅広い機能やツールを備えたプラットフォームが必要だが、あらゆるカテゴリーに対し多くの機能を提供できるのはわれわれだけだ」(Jassy氏)
コンピューティング - 機械学習トレーニング用チップ「AWS Trainium」発表
Jassy氏はreinventの実現にはテクノロジーが不可欠であり、reinventのためのテクノロジーを提供するAWSがreinventすることで、ユーザーにもreinventがもたらされると語った。
基調講演では、コンピューティング、コンテナ、データベース、ストレージ、 Machine Learning(機械学習)、カスタマーエンゲージメントに関する新たなサービスが紹介された。本稿では、コンピューティング、コンテナ、データベースの新サービスを紹介したい。
コンピューティングにおいては、Amazon EC2のインスタンスのラインアップが拡充された。今回発表されたのは以下となる。
- Amazon EC2 D3/D3enインスタンス
- Amazon EC2 R5bインスタンス
- Amazon EC2 G4adインスタンス
- Amazon EC2 C6gnインスタンス
- Amazon EC2 M5znインスタンス
Amazon EC2 D3/D3enインスタンスは第2世代Intel Xeonスケーラブルプロセッサ(Cascade Lake)、ローカルHDDストレージを提供する。Amazon EC2 R5bインスタンスは最大60GbpsのAmazon Elastic Block Store(EBS)帯域幅と260K IOPSをサポートした、大規模なリレーショナルデータベースワークロードに利用できるインスタンスだ。Amazon EC2 G4adインスタンスは高性能のグラフィックワークロードを利用しているユーザー向けのインスタンスで、近日中に公開予定だ。Amazon EC2 C6gnインスタンスはArmをベースとしたAWS Graviton 2プロセッサを搭載している。Amazon EC2 M5znインスタンスは最大4.5 GHzの周波数で、Cascade Lake世代のIntel Xeon ScalableProcessorを搭載しており、HPCのワークロードに適している。
AWSはEC2で提供するチップを独自で開発しているが、Jassy氏はその理由について、「われわれはインテルやAMDと提携しているが、高速なチップがあれば、それだけユーザーのイノベーションも早くなると考え、チップを開発している」と語った。
Jassy氏は新たなチップとして、2021年にリリースが予定されている機械学習トレーニングチップ「AWS Trainium」を紹介した。Trainiumチップは、アプリケーションのディープラーニングトレーニングのワークロード向けに最適化されているという。