スポーツに5Gがもたらす恩恵とは

5G通信が持つ「高速」「低遅延」「多台数接続」という3つの特徴を活かしたライブ会場での演出など、エンターテイメント業界での5G活用が増えてきている。

2020年11月下旬、ミライトは日本カントリークラブ(埼玉県入間郡越生町)にて、実証実験を兼ね関係者・メディアを対象に「5G×IoTゴルフソリューション展示会」を開催した。

日本カントリークラブは5Gのエリア外(2020年11月末時点)のため、実証実験ではNTTドコモの協力を得て、移動基地局を設置。ゴルフ場の一部に4.5GHz帯の5G環境を構築して行われた。

  • 移動基地局

    NTTドコモが提供する5G移動基地局

手間がかかるグリーン整備は5Gでどう変わる⁉

従来、グリーンの整備は地面を掘って土を回収し、専門業者に調査を依頼する必要があり、コストと手間のかかる作業であったという。また、日頃の管理のための見回りも、広大な敷地を有するゴルフ場では労力を有する業務である。

ミライトはセンサーやカメラによって人的コストを低減することのできる「IoTグリーン管理」の実証実験も2020年4月より同クラブで行っている。こちらは、土の中にセンサーを埋め込むことでpH(酸性度)や含水率を確認したり、4Kカメラによる高精細な画像を5G通信で伝送することで害虫の発生の有無やグリーンの状況を監視する事を目指したもので、2021年度の実用化を目標としている。

また、将来的にはグリーンの点検をドローンからの映像伝送で行うサービスも検討しており、ドローンからリアルタイムでの映像伝送に5Gを活用していきたいとする。

5Gで変わるゴルフコンペ

これまで大勢の人が参加するゴルフコンペを行う際、他のチームのプレイをリアルタイムで見ることは難しかった。ミライトでは、各ホールに設置したカメラから5Gによる高精細かつ低遅延でカート内のディスプレイやクラブハウスに映像を送る「他パーティ映像配信サービス」により、新しいゴルフコンペの楽しみ方を提案しようとしている。

  • 他パーティ映像配信サービス

    「他パーティ映像配信サービス」の映像の様子。同展示会では赤字の部分のみを5Gで配信し、他の映像はLTEで配信する手法を取り入れていた。5Gでの配信では遅延が無い一方、LTEでは数秒の遅延が見られた

テクノロジー×ゴルフの最前線

同展示会では、ミライトによる5Gを用いたソリューション以外にも、パートナー各社が自社で取り組んでいるソリューションの紹介が行われていた。例えば富士通とGPROが提供する落下地点予測サービス「Mobile Launch Monitor(MLM)」は、iOS搭載デバイスのカメラとドップラーセンサーを利用し、軌跡追尾を可能としたサービスとなっている。

  • MLM

    MLMをグリーンの上に置いて実際に使用している様子。iOS搭載デバイスをスティックに取り付け使用する。左下の赤いデバイスがドップラーセンサー

  • MLM

    取り付けたiOSデバイスの画面をディスプレイに映したもの。距離、スピード、打ち出し角度とともに、赤い線でボールの軌跡がわかるようになっている

このほか、富士通はモデルのプロ選手のフォームを分析したものと比較する事でプレイヤーとのスイングの癖を割り出す「SkillMonitor V2」の紹介も行っていた。

  •  SkillMonitor V2

    「SkillMonitor V2」のモニター画像。富士通独自の技術により、フェーズごとにモデルと比べた動きを分析する。レッスンの補助ツールとしての導入を見込んでいるという

テクノロジー×ゴルフの最前線

5Gの実証実験を兼ねた展示会を行った理由として、ミライト代表取締役社長の中山俊樹氏は「5Gを身近に感じるフィールドがあまりない中、5Gを活用したソリューションがスポーツを支えていくという事を体験してもらいたかった」と、5Gを活用した具体的な姿を見せたかったことを強調。

また、今後の展望について「これまでは携帯電話・スマートフォンのためだけにインフラを作る時代だったが、これからはローカル5Gなどでさまざまな目的のためにインフラを構築する動きが広がっていく。ゴルフ場への人の呼び込みなどにつながることを期待している」と今後の実用化に向けて展望を述べ、5Gの幅広い分野での活用に期待を覗かせていた。

  • 中山社長と八木本部長

    左から、ミライト代表取締役社長の中山俊樹氏と5G×ゴルフソリューションを統括する、常務執行役員みらい開発本部フロンティアサービス推進本部長八木伸吾氏