国立天文台は11月25日、小惑星「リュウグウ」の探査を終えて地球へ向けて帰還中の小惑星探査機「はやぶさ2」の姿を、すばる望遠鏡がハワイ現地時間11月20日午前0時過ぎに撮影したことを発表し、その画像を公開した。
「はやぶさ2」は順調に帰還を続けており、11月27日現在、地球までの距離は328万3000km強となっている。リュウグウで採取したサンプルを格納したカプセルを正確にオーストラリアのウーメラ砂漠に着地させるため、この10月以降は「リエントリ精密誘導航法」と呼ばれる軌道の微調整を実施中だ。
また、日本時間12月6日(日)に実施されるカプセルの地球帰還に向けて、JAXAの回収班もすでにオーストラリア入りしており、先発隊は11月16日にウーメラ砂漠に到着したことが発表されている。
カプセル帰還に向けて準備が着々と進む中、いち早く「はやぶさ2」を出迎えたのが、すばる望遠鏡だ。ハワイ現地時間11月20日午前0時12分から同29分頃まで、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム」を用いて、帰還中の「はやぶさ2」が撮影された。
公開された画像はRバンドで撮影され、3分間露出の画像を5枚重ねて処理したもので、画像の画角は2.0分角×1.0分角。背景の星が流れているのは、「はやぶさ2」の軌道に合わせて追尾しながら撮影したためだ。いわば、“宇宙の流し撮り”というところ。
撮影時点で地球までの距離は580万kmで、地球~月間の距離の約15倍。カシオペヤ座の方向24.6等級の明るさの光点として撮影された。24.6等級とは、肉眼で見える限界である6等級と比較すると2700万分の1という明るさだ。まさに100億光年以上彼方のディープスペースの銀河も撮影可能なすばる望遠鏡の性能ならではである。
このあとの「はやぶさ2」の動向は、正確なカプセル分離時間が12月5日の夕刻に発表される見通しで、JAXAによる現地からの動画配信も行われる予定だ。スタッフの数に限りがあるため解説などは行わない予定だが、カプセルが大気圏再突入して生じる火球は中継される予定としている。またカプセルの予測される軌跡については、iOSのみだが、任意の場所から見たその軌跡をAR表示するJAXAが監修したアプリ「Reentry AR」が公開中だ。
そして「はやぶさ2」はカプセルを地球に届けたあと、拡張ミッションを実施する計画だ。次は、微小小惑星「1998 KY26」を目的地とした10年を超える新たな長い探査に出る。「1998 KY26」は高速で自転しており、そのランデブーを目指すが、ターゲットマーカーの投下やタッチダウンなども検討されている。より難易度の高いミッションとなるようだ。
何はともあれ、大きなミッションを終え、リュウグウからの玉手箱を届けてくれる「はやぶさ2」を温かく出迎えよう。