TSMCが、中国江蘇省南京市の半導体工場「Fab 16」の300mmウェハ生産能力の拡張を進めており、2021年には月産2万枚規模に達する見通しと、台湾の代表的ビジネスメディア經濟日報が11月23日付けで報じている。
中国では同業のSMICが米国政府による半導体製造装置などの輸出に関する規制対象となったことから、SMICからTSMCの南京工場へと製造委託先を変更する企業が増加しており、工場の拡張はそうした需要に対応することを目的としたものだとみられている。
TSMC南京工場は2018年に月産1万枚規模で生産を開始、16nmおよび(その改良版ともいえる)12nmプロセスを中心に受託製造を行ってきた。先端プロセス技術流出を危惧する台湾政府の意向もあり、12nmよりも微細なプロセスの提供は行われておらず、EUVの導入予定もない。台湾での報道によれば、TSMCは、中国でのスマートフォン向けチップの受注が回復したため、計画通り南京工場の生産能力を最大となる月産2万枚まで増強することを認めているという。
南京工場に新規ファブ建設の可能性も
また、台湾のハイテクメディアDigitimesは11月23日付けで、TSMCの南京工場の生産能力に対し、中国顧客からの需要が上回ってきていることから、同工場の敷地に新たなファブを増設することを決めたと報じている。しかし、TSMCはまだ具体的な計画を発表する段階ではないとして「ファブ増設を決定した」との報道に対しては否定している模様だ。
なお、經濟日報によると、台湾ファウンドリ各社は、SMICからの振り替え需要が、SMICが主力と据える28nmプロセスにまで及んでおり、台湾および中国の28nmプロセスの生産能力も高めているという。いずれにせよ、TSMCは中国での受託製造需要の高まりに向け、生産能力を拡大させているのは確実なようで、米国での先端半導体工場建設に加えて、中国でも新たなファブの建設というようなことになれば、ファウンドリ業界におけるTSMCの寡占がさらに進む可能性が出てくることとなる。