近畿大学と、NTT、NTTドコモ、NTT西日本、NTTデータの5者は11月24日、5Gの実証実験ならびに高度なICTを活用したスマートシティ・スマートキャンパスの創造および教育・研究、そして地域社会の発展に向け包括連携協定を締結すると発表した。
近畿大学はこれまで、スマートキャンパスの実現に向けて、日本の大学に先駆けてインターネット出願、VISAプリペイド機能付き学生証の発行、Amazonでの教科書販売、コンビニでの各種証明書発行、キャンパスのキャッシュレス化など、先進的なICTの取り組みを進めてきている。
近畿大学 学長 細井美彦氏は、説明会において「今後は、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックにより、大学の物理的なキャンパスという概念が大きく変わると予想される。ニューノーマル時代の大学像を模索しつつ、進化を遂げる必要がある」と述べた。
同協定に基づく第1弾の取り組みとして、NTT・NTTドコモ・NTT西日本・NTTデータが保有する5GやIoTなどの最先端技術を活用し、近畿大学6キャンパスにてさまざまな取り組みを推進する。
5G活用の遠隔医療支援
第1弾の取り組みの1つとして、近畿大学病院と関連病院であるくしもと町立病院間で、NTTドコモの5G技術を活用した高精細画像のリアルタイム送受信を行い、へき地での遠隔医療支援の実証実験を実施する。
具体的には、胎児エコーの診断に5G技術の高速大容量通信による高精細な4K接写カメラ、エコー、CTスキャンの画像をリアルタイムでの送受信に加えて、遠隔地からの専門医の問診を同時に行うことにより、遠隔診断の高度化につなげるとしている。また、胎児エコーの診断時のみならず、災害時などの緊急医療においても高度な医療体制が構築できるのかといったことも検証する。
水中ドローンで養殖マグロの監視
またNTTドコモは、近畿大学水産研究所の生簀内に水中ドローンを設置し、完全養殖マグロの状態監視の実証実験を行う。
現在同大学では、クロマグロの養殖場において、海中環境を海面からの目視で確認を行っているが、海面が反射して見えにくい場合が多々あるという。そこで同実証実験では、養殖場を5Gのエリアとし、水中ドローンを遠隔操作して海中状況を高精細映像で撮影する。これにより、養殖物の生育状況の確認や環境データを取得し、養殖技術のさらなる向上につなげるとしている。
教育現場のDX
NTT西日本と連携した取り組みとしては、近畿大学6キャンパス内で、全学生の同時接続を想定したWi-Fi環境整備やオンライン・オンデマンド講義の導入により教育現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を行う。キャンパス内において、屋内から屋外への移動時もWi-Fiから5Gへとシームレスに接続することにより、ストレスフリーな通信環境を実現する。
また、近畿大学オリジナルのデジタル教材を制作支援・配信し、学校教育、リカレント教育のコンテンツの拡充も推進する。現在同大学が使用している紙教材をデジタル化し、ARや動画教材といったコンテンツを、対面のみならず、オンラインやオンデマンド型の授業での活用を進める。さらに、アクセスログなどのデータを解析して学生などの理解度を分析することにより、個別最適化された質の高い学習の提供につなげるとのことだ。
そのほか、NTTデータと連携して、同大学の図書館にある貴重資料のデジタルアーカイブも実施する。貴重な資料をデジタル化することでWebサイト上で公開できるだけでなく、検索機能や資料の拡大・収縮などが可能になり、検索や閲覧が行いやすくなるとしている。
5者は今後、第1弾の取り組みのほか、近畿大学キャンパスを活用したスマートモビリティおよびドローンビジネスの推進や、近畿大学キャンパス周辺企業や地域社会と連携した5Gのオープンイノベーションの推進および5Gの発展に寄与することを目指す。
また、実証実験・研究成果を教育活動にフィードバックし、Society5.0時代に必要となる、高度なICT技術を活用できる人材育成についても注力する方針だ。
NTT 代表取締役副社長 副社長執行役員 澁谷直樹氏は「5GやICTの研究を進めるフェーズは終わりに近づいている。社会への実装を早急に進めるため、教育機関や一次産業関係者といったさまざまな方々とデジタルの活用について議論を進めなければならない」とコメントした。