MediaTekの子会社である電源管理IC専業の台Richtek Technologyが、Intelの電源管理製品事業(Enpirionブランド)を買収することで合意したと複数の海外メディアが報じている。買収価格は8500万ドルで、規制当局の承認を得て、2020年第4四半期には取引を完了する予定だという。MediaTekとIntelは、このM&Aの事実を認めているというが、プレスリリースなどは出されていない。

  • Enpirion

    Intel Enpirion製品群 (出所:Intel Webサイト)

Enpirionは、もともとはAlteraが2013年5月に1億4000万ドルで買収した電源管理ICベンダで、Alteraが2015年12月に167億ドルでIntelに買収された際、AlteraとともにIntelに吸収された。Alteraは、FPGAの性能を発揮させるためには周辺回路も重視する必要があるとしてEnpirionを買収したが、電源管理ICの価格競争は激しく、Altera買収以降の7年間、赤字からの脱却はできなかったもようだ。

Enpirion PowerSoC製品は、同等のディスクリートによる電力変ソリューションと比べて、電力密度の高さと電気ノイズの低さを特徴とし、FPGAはじめさまざまな半導体製品の電力供給を可能としたものである。

Intelは、先だってNAND事業をSK Hynixに売却することを発表しており、今回のEnpirion事業の売却も含め、データセントリックなCPU関連ビジネスに注力するための事業の選択と集中とみられている。競合のAMDが、Intelが先端プロセス開発に躓いているのを後目にTSMCの先端プロセスを活用した製品でシェアを拡大してきているほか、NVIDIAもArmの買収により、データセンター向けCPUを投入する可能性もでてくるなど、Intelを取り巻く環境は決して安寧ではない。Intel自身も2021年1月をめどに、CPUの製造を自社で継続するのか、外部に委託をするのか、判断するとしており、今後、Intelが築いてきたCPU市場の地位をどのように守り、発展させていくのか、来春の新たな戦略発表に注目が集まっている。