韓国産業通商資源部傘下の韓国特許庁は11月12日、韓国でロジック半導体製造に続いてDRAM製造でも使われ始めたEUVリソグラフィに関連する特許の過去10年間にわたる出願動向調査結果を発表した。
韓国特許庁の調査によると、最近10年間(2011年1月1日〜2020年9月30日)に韓国で出願されたEUVに関連した特許件数は合計558件であったという。ただし、EUVレジストなど化学薬品の組成や成分のみに関する化学分野の特許は除いているものの、これらを用いたEUVプロセス特許は含んだ値だという。
このうち、韓国から見て外国系(韓国から見た外国人や海外企業)による出願件数は376件、韓国系(国内企業)による出願件数は182件と、外国系による出願が韓国系による出願の2倍以上を占めていた。ピークは2014年の88件でその後、緩やかな減少傾向にあり、2018年55件、2019年50件、2020年(9月末まで)48件となっている。
EUV露光関連特許は、長年にわたり外国系による特許出願が多かったが、2019年にこの比率が急激に変化し、韓国系の出願比率が全体の8割を占めるに至り、2020年もこの傾向が継続している。「韓国でのEUV露光技術が2019年からいよいよ成長期に入った」と韓国特許庁は分析している。
過去10年間に韓国で出願されたEUV露光関連特許を企業別に分類すると、独Carl Zeissが18%、Samsung Electronicsが15%、ASMLが11%、韓S&S TECHが8%、TSMCが6%、SK Hynixが1%で、これらの6社で全体の59%を占めている。S&S TECHは、日本ではあまりなじみがないが、2001年創立のマスクブランクスメーカーであり、海外にも輸出している。
技術別では、EUVプロセス技術32%、EUV露光装置技術31%、EUVマスク技術28%、その他の9%に分布される。EUVプロセス技術の分野では、Samsung Electronicsが39%、TSMCが15%で、両社の出願だけで全体の54%を占めている。現在、この2社がEUV露光装置を提供するASMLの2大顧客となっている。この分野では、東京エレクトロン(TEL)が5%で3位に入ったのが注目される。同社は、世界市場でEUV向けコータデベロッパ(クリーントラック)をほぼ独占している。
露光装置技術では、Carl Zeissが52%、ASMLが35%、Samsung Electronicsが5%、ニコンが2%だった。Carl Zeissは、ASMLと協業し、EUV露光装置の光学系を一手に引き受けている。ニコンはキヤノンとともにすでにEUV露光装置の開発・製造から撤退しており、ASMLの独走を許している。
マスク技術の分野では、地元韓国のS&S TECHが28%、日本のHOYAが15%、韓国の漢陽(ハンニャン)大学が10%、AGC(旧旭硝子)が10%、Samsung Electronicsが9%の順であり、日本勢が今まで韓国で出願されたEUVマスク関連特許は全体の1/4を占めている。日本では、半導体産業の復権を目指して長年にわたるEUV露光関連の国家プロジェクトが進行してきたが、日本の半導体企業が微細化競争から早々と撤退してしまい、日本にはもはやEUV露光装置メーカーもそれを必要とする先進半導体企業もなくなり、かろうじてフォトマスクと(今回の調査では取り上げていない)レジストの分野で存在感を維持しているのが現状である。現在、東京応化工業、JSR(旧日本合成ゴム)、信越化学など日本勢が高いシェアを有しており、レジストトップメーカーの東京応化工業は、すでに韓国に進出し、サムスン物産と合弁でEUVレジストを含む半導体製造用レジストの現地生産を進めているが、米DuPontも韓国内でEUVレジストの量産準備中である。
韓国特許庁のChoi Minsook半導体特許チーム長は、この調査結果を総括して「EUV露光技術と、マスク技術の分野では韓国企業および大学が善戦している。今後、4次産業革命と高性能・低消費電力の半導体製造のためのEUV技術がますます重要になるだろう。韓国勢の特許が少ない露光装置分野においても技術自立のための研究開発と、これを保護することができる強力な知的財産権の確保が必要である」と述べている。