琉球大学が5日、痛風の治療薬として知られる「コルヒチン」が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を防ぐ薬として有効であることを確認するために来年1月に横浜市立大学と共同で臨床試験(治験)を始める、と発表した。コルヒチンは痛風薬として既に安全性が確認されており、COVID-19に対する効果も確認できれば、初の軽症、中等症患者向けの抗炎症薬となる。
COVID-19の治療薬は、抗ウイルス薬と抗炎症薬に大別できる。現在、軽症や中等症1(肺炎症状はあるが酸素投与は必要ない)の患者を対象とし、厚生労働省の承認を受けた薬はない。抗ウイルス薬では「アビガン」として知られるファビピラビルが承認申請中だが、抗炎症薬はこれまで申請もされていなかった。 コルヒチンはイヌサフランの種子や球根に含まれる成分でローマ時代から痛風治療に用いられていた。細胞の炎症を抑える作用があり、痛風の治療薬として既に認可されている。COVID-19は、体内でウイルスに対する過剰炎症が起きて重症化することが分かっている。琉球大学大学院医学研究科の金城武士助教、植田真一郎教授、同大学病院臨床研究教育管理センターの池原由美助教らの研究グループは、このコルヒチンに着目。2017年から2型糖尿病合併の心疾患患者を対象にした治験を続けていた。 この治験の過程でコルヒチンの作用メカニズムがCOVID-19にも有用であることが判明。琉球大学の研究グループは、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科長の山中竹春教授らと共同で、これまで「空白」となっていた軽症、中等症1患者向けの抗炎症薬の開発を目指し、治験を始めることにしたという。 計画によると、治験の第1段階は来年1月から5月ごろまでの間、沖縄、埼玉、東京の3都県の約10の医療機関で実施。高齢者ら重症化リスクのある軽症患者と、酸素投与を必要としない中等症1の患者の計約100人に4週間、コルヒチンを服用してもらう。治療効果を分析し、大規模治験を経て、早期の治療薬承認を目指すという。
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