科学技術振興機構(JST)は15日(日)から22日(日)までの8日間、よりよい未来社会を科学者と市民がともに考える科学イベント「サイエンスアゴラ2020」を開催する。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年は初めてオンライン形式とする。テーマは「Life」(生命、生活、人生)。コロナ禍が私たちのLifeにもたらしたさまざまな変化に向き合う。13日(金)と14日(土)の2日間は「プレアゴラ」として関連企画を実施。全体で約100件の企画を展開する。
サイエンスアゴラは今年が15回目。開幕セッションはコロナ禍を踏まえ、科学技術イノベーションは明るい未来社会の実現にどう貢献できるかを、デジタルトランスフォーメーション(DX)やウェルビーイング(幸福感)、インクルーシブネス(包摂性)などの観点から、有識者とともに見つめ直す。登壇者は日本電信電話(NTT)の篠原弘道会長(総合科学技術・イノベーション会議議員)や米IBMの浅川智恵子フェロー、経営共創基盤の冨山和彦IGPIグループ会長ら。
コロナ関連の企画のうち「アゴラ市民会議『人と人の間はテクノロジーでつなげるか~ポストコロナ社会における人間らしいLifeのゆくえ』」では、コロナを踏まえて変わりゆく暮らしを考える。また「危機対応における科学コミュニティの役割とは~COVID-19パンデミックの教訓から~」では、大きな危機に直面したときに科学者が社会に何を与えられるのかといったトピックも扱う。
その他、コロナ関連では「人間と機械の共生が創る新しい生活様式」「ポストコロナ時代の研究活動における情報共有~成果発表・学会~」「国立研究開発法人協議会シンポジウム『with/postコロナ社会を生き抜くために』」「『アフターコロナ』における生活とマルチエージェントシステム:ゲーム理論で利己性と他者性融合の試み」「研究者と語ろう ~新型コロナウイルス (COVID-19) 免疫学的視点×ウイルス学的視点~」「COVID-19と気候変動に立ち向かうアプリ開発コンペティション『Call for Code 2020』日本最優秀賞チーム発表会」など盛りだくさんだ。
このほか、謎解き、実験施設のバーチャルツアー、オンライン科学実験、宇宙に関するトークショー、ビッグデータと医療など家族で科学に親しめる企画を多数用意している。日時を定めたライブ配信で、出展者との対話を希望する場合は事前登録が必要。動画は後日ユーチューブで視聴でき、開幕と同時に閲覧可能なオンデマンド配信もある。自分の好みに合った企画を探す際には、15日から稼働を予定している人工知能(AI)による案内機能が役立ちそうだ。
15日には第2回「輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)」の表彰式とトークセッション「私の未来、輝く女性研究者とともに」が行われる。坂井南美・理化学研究所主任研究員がジュン アシダ賞を、星野歩子・東京工業大学准教授が科学技術振興機構理事長賞をそれぞれ受賞する。トークセッションにはこの2人と、輝く女性研究者活躍推進賞に輝いた群馬大学の平塚浩士学長が高校生らと登壇する。
19日(木)には社会課題の地域での解決と科学技術に焦点を当てた「STI for SDGs」アワードの表彰イベントが開かれる。文部科学大臣賞には一般社団法人Wheelogなどの「みんなでつくるバリアフリーマップ『Wheelog!』」、科学技術振興機構理事長賞には香川大学などの「超小型モバイル胎児モニターを用いて安心・安全な妊娠・分娩を実現する」が選ばれた。優秀賞はしまあめラボの「赤島活性化プロジェクト~雨水活用による持続可能社会の模索~」とCraif株式会社の「独自デバイスを用いた尿中miRNAの網羅的解析による高精度がん早期発見」の2件。受賞団体による取り組みの紹介や、選考委員長の蟹江憲史・慶応大学教授を交えたパネルディスカッションを行う。
プレアゴラの目玉は、障がい者と先端技術の開発者が協力して日常生活に必要な動作を競う国際競技大会「サイバスロン」で、在日スイス大使館と共催する。種目は車いすや義手、義足など6課題。20カ国の53チームがそれぞれの拠点にコースを設けて競い、ライブ配信する。13、14日に東京会場(日本科学未来館)でレースを実施するほか、日本の出場チームのデモも予定している。
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