Micron Technologyは11月9日(米国時間)、176層3D NANDフラッシュメモリの出荷を開始したことを発表した。

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    Micronの176層3D NANDの概要

この176層3D NANDは、これまでのアーキテクチャとは異なり、独自開発したCMOSアンダーアレイ構造(CuA)を採用している。CMOSトランジスタ層の上にメモリアレイを形成する構造で、従来のCMOSトランジスタ層の横にメモリセルを配置する構造に比べて専有面積が縮小できたとしている。しかもワード線の電極を、従来のポリシリコンゲートではなく、メタルゲート構造にしている点も従来比15%の高速化に寄与しており、エッジコンピューティングやAI推論、リアルタイムのグラフィックスゲーム機器などに向くとしている。なお、中YMTCは、Micronとは逆にメモリアレイの上にCMOS回路を配置するを構造をウェハ張り合わせ技術で実現している。

さらに、NANDセルテクノロジを長年使ってきたレガシーのフローティングゲートからチャージトラップに移行することにより、将来のNAND世代のスケーラビリティとパフォーマンスを向上させた。このチャージトラップ技術は、シリコン層の代わりに電性の高い金属ワードラインを使用して、高いパフォーマンスを実現する第2世代スタック型リプレースメントゲート(RG)アーキテクチャと組み合わされて用いられている。RGアーキテクチャの採用によって金属制御ゲート中の抵抗を軽減してセル間の容量性カップリングの問題を改善し、高速でスムーズかつ高性能なパフォーマンスを持つ大容量のデータストレージシステムを実現できたという。また、チャージトラップ方式を採用することで、積極的なコスト削減を推進することができるとしている。書き込み耐性(エンデュアランス)を強化したため、航空機のブラックボックスやビデオ監視カメラのように書き込みの多い用途にも使えるとしていう。

加えて、データセンター向けSSDの重要な設計基準であるサービス品質(QoS)も、前世代NAND比でブロックサイズを59%縮小、読み取りレイテンシの不安定さを48%軽減するなど改善が行われており、これにより、データレーク、人工知能(AI)エンジン、ビッグデータ解析などのデータ集約型の環境やワークロードの高速化が可能になるほか、5Gスマートフォンでは、QoSの向上により、アプリの起動や切換えが高速化するだけでなく、モバイルデバイスの使用感がさらにシームレスで応答性に優れたものになり、低レイテンシな5Gネットワークを存分に活用した真のマルチタスクが可能になるとしている。

さらに、ファームウェア開発を簡素化するため、ワンパスプログラミングアルゴリズムを採用することで統合を容易にしており、市場投入にかかる時間を短縮することを可能としたとしている。

なお、同社では176層トリプルレベルセル(TLC)3D NANDとしてシンガポール工場にて量産を進め、CrucialコンシューマーSSDをはじめとした製品展開を進めていく予定で、2021年中にさまざまな製品を投入していく計画だとしている。

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    フローティングゲートからチャージトラップRG方式への変更。ゲート材料もポリシリコンからメタルに変更、ストレージ部分のSiN膜を採用。チャネル径は同じでもエッチ径が広く取れるのでエッチングしやすくなった (出所:Micron Webサイト)