多国籍大手化学・医薬品メーカーである独Merckは10月28日、韓国京畿道と平澤市との間で、2000万ユーロの先端ディスプレイ用OLED(有機EL)発光素材製造への投資を骨子とする了解覚書(MOU)を締結したと明らかにした。
韓国京畿道平澤市浦升邑にある自社のOLED発光素材製造施設を増強して発光材料を作るのに必要な昇華精製施設を拡充する予定で 設置が容易なモジュール式生産システムを構築する方針だという。並行して中国での自社OLED素材工場でも生産能力を増加させるという。韓国および中国の現地生産能力強化により、両国のパネルメーカー向けの高純度OLED材料の主要サプライヤーとしての同社の地位を強化する狙いだという。
Merckは、30年にわたる研究活動と、有機EL製造能力への投資により、この技術に関する主要材料サプライヤーである。2010年、Merckは独ダルムシュタットにあるグローバル本社にOLEDリサーチセンターを設立し、2015年、同社は韓国の平澤にOLEDアプリケーションセンター(OAC)を開設した。2018年には中国の上海にあるOLEDテクノロジーセンター(OTC)を設立し中国の顧客をサポートしている。同社にとって、OLED材料は将来の成長のための明確な投資重点分野の1つであるとしている。
市場調査会社の英OMDIAによると、今年、スマートフォン向けフレキシブルOLED市場規模は、51%成長する見込みだ。 去年は1億5800万枚であり、今年は2億3800万枚にまで増えるものと予想されている。
Merckが韓国企業とバイオ医療開発を協業する研究施設も仁川に開設
Merckは今月(10月)、ハイテク企業団地のある韓国仁川市松島に「Mラボコラボレーションセンター」を開設した。同センターは、バイオ医薬品メーカーに対して、メルクの科学者やエンジニアと密接に協力して最も困難な課題を解決し、新しい治療法の開発と生産を加速できる探索的環境を提供するとしている。
韓国の成長するバイオ医薬品市場のニーズにこたえてSamsung Biologicsのような大企業から、希少疾患や異なる種類の癌を治療するための生物学的製剤を開発している新興企業まで、地元のバイオ医薬品メーカーにさまざまなサービスを提供するという。このように、Merckは、ディスプレイ、半導体からバイオテクノロジーに至るまで韓国にハイテク産業分野に集中的に投資している背景には、輸出規制や感染蔓延リスク対策として韓国中央および地方政府が外資企業の誘致を熱心に行っていることがあげられる。韓国企業は、韓国内の現地企業(現地生産の外資を含む)から素材やサービスを調達する傾向がますます強まっている。