AMDは10月27日、Xilinxを350億ドルで買収することで合意に達したと発表したが、半導体市場動向調査会社のTrendForceが、この買収に関する分析を行った。

ファブレスIC業界3位も視野に入るAMD+Xilinx

今回の買収が計画どおりに進めば、AMDはIntelがデータセンタ向けソリューションとしているXeon+FPGA(旧Altera)と同様のソリューションを手に入れることができるため、データセンタ、ADAS、産業オートメーションなどの分野での影響力を高めることができるようになる。TrendForceの調査によると、AMD+Xilinxの合計売上高はファブレスIC業界3位のMediaTekを上回り、業界4位にまで浮上することになるという。ファブレスIC業界では、BroadcomとQualcommがトップ争いを繰り広げているが、今回のAMDの動きにより、3位のNVIDAI(+Arm)との間で激しい争いが繰り広げられることが予想される。

  • TrendForce

    半導体ファブレスIC設計会社トップ5社(Broadcom、Qualcomm、NVIDIA、MediaTek、AMD+Xilinx)の年間売上高の過去4年間の推移 (出所:TrendForce)

IntelとNVIDIAは、AI、5Gインフラストラクチャ、ADAS、および産業オートメーションで存在感を示してきた。AMDは、こうした2社と比較して、これらの分野での存在感は希薄であったが、CPUとGPUの同時開発、およびTSMCとのパートナーシップ強化により、これらのライバルを猛追している。しかも、Intelが10nmプロセスに続いて7nmプロセス開発でももたついており、その差は確実に縮まっているといえる。

しかし、全体としてAMDは、製品ラインアップ、製品提供範囲範囲、テクノロジー、および売上高の点でIntelおよびNVIDIAに遅れをとっているとTrendForceはみている。AMDは、Xilinxを買収することで、FPGAの柔軟性と並列コンピューティングの利点を活用して、IntelおよびNVIDIAとの差を埋め、5Gインフラストラクチャ、AI、ADAS、および産業オートメーションでの商機を生み出すことを狙っているようだ。ただし、TrendForceのアナリストCY Yao氏は、Xilinxの業績に関して、「米中貿易戦争により、過去3四半期にわたり前年比で売上高が減少した。貿易戦争がさらに激化し、エンティティリストが拡大した場合、Xilinxは結果としてさらに多くの課題に直面するだろう。AMDは、買収手続きが完了する予定の18か月後に、Xilinxのこのような状態を改善できるか経営手腕が問われている」と述べている。

AMDによるXilinx買収後の製品ポジショニング戦略、R&Dリソース、開発者ツール、およびライブラリの統合および合理化を図るためには、両者間の効果的なコミュニケーションが必要であるとTrendForceは指摘している。開発者ツールやライブラリを含むソフトウェアリソースの統合は、CPU、GPU、およびFPGA間で互換性がある必要があるため、AMDにとって特に難しい課題になる可能性がある。また、Xilinxの顧客の中には、Intel CPUの使用者もおり、調整しなければならない課題が山済みしている。