Maxim Integratedは10月29日(米国時間)、同社のヘルスケアウェアラブル向け開発プラットフォームであるHSP(Health Sensor Platform)に、新しいHSP 3.0に準拠した「MAXREFDES104#」を発表した。これに関する事前説明会の内容を基に、ご紹介したい(Photo01)。

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    Photo01:説明を行ったAndrew Baker氏(Managing Director of Industrial & Healthcare Business Unit)

HSPそのものは、2016年10月にHealth Sensor Platformを発表した時から継続して提供されているが、2018年9月にはHSP 2.0が発表されている(Photo02)。今回のHSP 3.0はこの後継となる位置づけである。

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    Photo02:2016年の段階では、まだHSPという名前ではなく、ボードも大きなものだった。これがHSP 2.0では(ややゴツイとは言え)腕時計サイズに収まった。HSP 3.0はさらに小型化が進んでいる

そのHSP 3.0の特徴がこちら。医療機器グレードの製品を作るのに必要な精度を実現すると共に、複数のバイタルサインをカバーできる様になったとする。

ここで重要なバイタルサインとして挙げられているのがPhoto03で、体温、血中酸素飽和度(SpO2)、呼吸数、心拍数、それと心電図計である。このうち心電図計については、Apple Watchですでに心電図機能が測定可能にも関わらず、日本では医療機器としての認定が取れておらず利用不可能とされていたが、2020年9月4日付で医療機器認証を取ったとして話題になったアレである。

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    Photo03:何と比べて最低でも6か月短縮できるのか、というのが今1つ明確ではないが、例えばHSP 2.0をベースに同じものを作るとなると、結構時間がかかるだろうというのは想像できる

もちろんApple Watchしか測定できない訳ではなく、当然今後は他のメーカーも認証を取って市場投入することを目論んでいるはずで、こうしたメーカーにとって、短い開発期間でこうした製品を投入できるHSP 3.0はありがたい存在と言える。

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    Photo04:これ以外にモーションセンサーも内蔵されている

ユースケースとして挙げられたのは、例えば心電図計を利用して心拍変動を確認するとか、睡眠の質やストレスレベルを確認するなどで、医療グレードで利用できる精度の出力が得られるとしている。

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    Photo05:これらはPhoto04から得られたデータを基にアルゴリズム的に算出される(これはMaximから提供される模様)

HSP 3.0そのものはこんな構造(Photo06)で、フラッシュメモリとモーションセンサーとして使われる加速度計以外、すべてMaximの製品である。この中で、特に心電図計およびPPG(Photoplethysmogram:SpO2と心拍数を測定するパスルオキシメータを利用して得られる血管中の血流の脈波)向けのアナログフロントエンドは医療機器グレードの精度と性能を持っている、という話であった(Photo07)。

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    Photo06:特に温度センサーは、ウェアラブル向けとしては最高グレードとなる、精度±0.1℃のものを搭載した、としていた

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    Photo07:ちなみに心拍数だと緑色のLED、SpO2の測定だと赤外線LEDを使うといった具合に使い分けがなされるそうで、それもあってMAX86176では4つのAFEを搭載し、2chの同時測定が可能という話であった

このHSP 3.0準拠のMAXREFDES104#開発ボードは、同社のWebサイトより400ドルで提供されるとの事である。ここにはハードウェアとファームウェア、およびアルゴリズムも含まれている。