新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内対策を厚生労働省に助言する専門家組織(アドバイザリーボード、脇田隆字座長)は28日、全国の感染状況は10月に入って以降首都圏で減少せず、地方でもクラスター(感染者集団)が発生して微増傾向が続いている、とする見解を発表した。同組織はまた、年代ごとの重症率や治療法など、COVID-19の国内の現状をQ&A形式で示した「10の知識」をまとめた。

専門家組織がまとめた資料によると、人口10万人当たりの全国の新規感染者数は10月6~12日では2.84人だったが、20~26日では3.21人に増加した。同時期比較で東京都は8.93人から7.82人に減ったものの、神奈川県が4.24人から4.63人に微増するなど、首都圏全体で見ると減少していない。一方、繁華街でクラスターが発生した北海道が3.30人から5.62人に、沖縄県が10.05人から16.66人に増えるなど、地方での増加が目立ち、全国的に見ると微増傾向が続いている。

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    新規感染者報告数の推移を示すグラフ(厚労省提供)

同組織は、感染者1人が何人に感染させるかを示す実効再生産数は最近、東京都、大阪府、北海道、沖縄県などで1前後を推移し、直近1週間の平均では1を超える地域が多い、とした。また、クラスターは地方の繁華街のほか、会食や職場、外国人のコミュニティーなどで発生し、事例が多様になっていると指摘。人の移動など社会活動の活発化が感染拡大要因になる、と警戒を呼びかけている。

専門家組織がまとめた「10の知識」は「患者数・病原性」「感染性」「検査・治療」の3つに大別し、合わせて10の項目について、COVID-19に関する情報が広く正しく伝わるよう分かりやすく解説している。

「10の知識」は、「(現時点での)国内の感染状況は全人口の約0.08%に相当し、年代別では20代で最も多く、20代人口の約0.2%に相当」「重症化割合は高齢者ほど高く、6月以降の診断で重症化した人と死亡する人の割合はそれぞれ、50代以下で0.3%、0.06%、60代以上で8.5%、5.7%」とした。30代と比較した60代、70代、80代の重症化率はそれぞれ25倍、47倍、71倍にもなる。重症化しやすい要因として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、心血管疾患、肥満などを列挙した。

また「感染リスクが高まる5つの場面」として「飲酒を伴う懇親会等」「大人数や長時間におよぶ飲食」「マスクなしでの会話」「狭い空間での共同生活」「(仕事場から休憩室などへの)居場所の切り替わり」を挙げた。

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    感染リスクが高まる「5つの場面」(厚労省提供)

治療法については、呼吸不全を伴う場合には酸素投与や炎症を抑えるステロイド薬、抗ウイルス薬を投与し、改善しない場合は人工呼吸器による集中治療を行うとした。そしてこうした治療法の効果もあり、6月6日以降入院した患者の死亡率は、それ以前と比べ、全年齢で19.4%から10.1%に、70歳以上では31.2%から20.8%にそれぞれ減少したとのデータも載せている。

ワクチンについては、国内外で研究が進んでいるとした上で「実際に発症や重症化を予防できるかは、今のところ分かっていない」などと強調した。

厚労省の専門家組織は、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会とは別の組織で、同に対策を助言するために設置され、感染症や疫学、医療倫理の専門家らで構成している。

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    新型コロナウイルスの電子顕微鏡撮影画像(NIAID提供)

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