部科学省は国際月探査への参画に向け、新たな日本人宇宙飛行士を来年秋ごろに募集することを明らかにした。2008年以来の募集により月面着陸も視野に、将来にわたって有人宇宙開発を継続的に支える人材を確保する。一方、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は野口聡一さん(55)が日本時間11月15日、米国の新型宇宙船「クルードラゴン」の本格運用初号機で国際宇宙ステーション(ISS)に出発すると発表した。

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    月面で活動する飛行士(左)と、月上空を周回する基地(いずれも想像図、NASA提供)

米国は2020年代に国際協力で月上空に周回基地を建設し、24年にアポロ計画以来約半世紀ぶりとなる月面着陸を目指す「アルテミス計画」を進めている。日本政府は昨年10月に参画を決定。今年7月には文科省と米航空宇宙局(NASA)が、日本人の着陸機会に言及した共同宣言を発表した。こうした状況を受け、月探査で活躍できる新たな飛行士の獲得に乗り出す。今後は人数を維持するため5年に1回程度、募集することも想定。萩生田光一文部科学相が23日の会見で明らかにした。

萩生田文科相は「宇宙探査研究への日本の取り組みを国民によく知っていただく上で、日本人飛行士が参画することは極めて大事だ。チャンスを活かしていけるよう後押ししていきたい。宇宙開発研究で得た知見を、皆さんの暮らしを一歩でも前進させるためにさまざまな分野で活用している。しっかりアピールしていきたい」と述べた。

募集は6回目となる。JAXAは前回の08年には応募条件に、日本国籍、自然科学系の大学卒業以上、研究開発などでの3年以上の実務経験、訓練や宇宙活動への対応能力、泳力や英語能力などを挙げた。963人の応募者から油井亀美也飛行士(50)ら3人が選ばれている。今回の募集、選抜や訓練では民間企業のノウハウやアイデアを積極的に活用するという。

JAXAの現役飛行士は43~57歳の7人で、平均年齢は51歳。選抜後は基礎訓練に2年程度、さらに飛行決定後の訓練に1年から数年かかるため、「アルテミス世代」の早期の確保が期待されてきた。4回の飛行経験を持ち、日本人初のISS船長を経験したJAXAの若田光一特別参与は「多くの皆さんが月探査でも活躍できる飛行士を目指して応募して下さることを期待しています」とコメントした。

JAXAは野口さんが日本時間11月15日午前9時49分、米国人3人とともにクルードラゴンで出発することを27日、明らかにした。今月31日の予定だったが、打ち上げに用いるロケットに安全確認の必要が生じ延期されていた。野口さんの飛行は3回目で、ISSに約半年間滞在する。

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    出発を控えた野口飛行士。コロナ対策でマスクをつけながらの訓練(左)と、クルードラゴンに同乗する米国人らとの会見(いずれもJAXA、NASA提供)

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