Zendeskは10月28日、調査会社であるEnterprise Strategy Group(ESG社)と共同で実施した、カスタマーエクスペリエンス(CX)に投資するビジネスメリットについての調査結果の考察についての説明会を開催した。

同調査は、2020年7月14日~2020年8月8日、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋、ラテンアメリカの合計1,000人以上のCXマネージャーとリーダーに、CXへの投資状況について質問したもの。

地域別内訳は、北米(N=256)、ヨーロッパ(N=250)、アジア(N=250)、ラテンアメリカ(N=256)。企業規模の内訳は、小規模企業(従業員数100人未満、N=500)、中規模企業(従業員数100~999人、N=255)、大規模企業(従業員数1,000人以上、N=257)。

ESG社は、調査結果からCX Maturity Scale(CX成熟度評価)を策定し、主要な7つの特性において、各企業のパフォーマンス向上を目的としたカスタマーサービスチーム、テクノロジー、データの活用方法を評価し、CXの成熟度を3つのレベルに分類した。

具体的には、7つの特性のうち0~3つに該当する企業をスターター(Starter)、4~5つに該当する企業をライザー(Riser)、6つ以上に該当する企業をチャンピオン(Champion)に分類している。

  • 調査方法

調査によると、チャンピオンに該当する企業は全体の24%で、大多数の企業はCXの初期段階にあるという。

チャンピオン企業は、以下のような特徴があるという。

●パンデミックの最中でも、中堅~大規模企業のチャンピオンは、スターターと比較して顧客支出額の伸び率が8.7倍となり、小規模企業のチャンピオンの場合は9.2倍となっている。

●過去6カ月間で、中堅~大規模企業のチャンピオンは3.3倍高い割合で顧客ベースを拡大し、小規模企業のチャンピオンの場合も3.6倍となっており、同様の成長を遂げている。

●チャンピオン企業は、社内の経営幹部からの投資やサポートといった面でも卓出していおり、たとえば、経営幹部がカスタマーサービスを差別化要因と見なす割合についても、中堅~大規模企業のチャンピオンの場合は3.8倍高くなった。

●中堅~大規模企業のチャンピオンは、4.9倍高い割合でリモートワークに効果的に移行し、小規模企業のチャンピオンの場合は7.8倍となっている。

  • チャンピオン企業の特徴

日本企業の回答結果は次の通りで、Zendesk 製品担当プレジデント エイドリアン・マクダーモット(Adrian McDermott)氏は「日本はまだまだCXにおいて伸びしろがあり、投資を増やしていくメリットがある」と語った。

● 日本企業の平均初回対応時間は2時間、平均総解決時間は6時間。

● 顧客の問題の99%が解決されていると回答した日本企業の割合は23%と高い傾向。(同様に回答したインド企業の割合は9%。)

● 日本企業の5社に1社以上(22%)が、エージェントはチャネルの切り替え機能をシームレスに利用していると回答。

● エージェントの効率性を「高い」または「市場をリードする」と評価している日本企業は14%。オーストラリア(58%)、インド(49%)、シンガポール(25%)と比較すると割合が低い。

● 過去6か月間に市場シェアが拡大したと回答した日本企業は、14%。また、過去6か月間に顧客1人当たりの支出額が大幅に増加したと回答したのは、わずか2%。

● 日本企業の10%は、リモートワークへの移行が非常にスムーズに進んでいると回答。

● カスタマーサービスやサポートチームが競争上の差別化要因となっていると回答した日本企業の割合はわずか7%。

● 日本企業のわずか5%が、今後12か月間に自社のCXへの投資が大幅に増加すると回答。

  • Zendesk 製品担当プレジデント エイドリアン・マクダーモット(Adrian McDermott)氏

これらの結果を踏まえ、エイドリアン氏は、CXチャンピオン企業になるための5つの提言を発表した。

1つ目は、すべてのサービスをセルフサービスにすべきだという。

理由としては、ハーバードビジネスレビューの調査では、問い合わせする前に顧客の81%がWebサイトで解決策を探しており、セルフサービスによって50-75%、問題解決する時間が短縮されるというガートナーの調査結果があるためだという。

「インターネットの普及により、人々は問い合わせする前に検索してみることが、トレーニングされている。セルフサービスを導入しなければ、問い合わせがどんどん増え、社内のリソースでは対応しきれなくなる」(エイドリアン氏)

  • セルフサービスはどこにでも

また同氏は、「セルフサービスを上手く実装するには、コンテンツ戦略が要だ。情報を提供する側が情報をうまくコントロールすることで、顧客も満足度が向上する。セルフサービスは、継続しデータが蓄積されることで、どういった問い合わせが多いのかがわかり、ヒット率も高まっていく」とした。

2つ目はツイッターやメッセンジャー、LINEなどのメッセージアプリを活用すべきだとした。

スマートフォンユーザーの85%はメッセージアプリを活用しており、10人中9人は企業とのやりとりにおいてもメッセージアプリを利用したいと考えているという。

  • メッセージはもはやデフォルト

「企業側は顧客とのチャネルが増えるとスタッフを増やす必要があると考えるかもしれないが、それは勘違いだ。弊社でも、メッセージングアプリのチャネルが顧客満足度が一番高い。それは効率が高く、やり取りの記録が残るためだ。さらに、メッセージで対話型ビジネスも行える。例えば、返品のお願いやオーダーができる機能も組み込まれている。日本のLINEもそうだ」(エイドリアン氏)

3つ目はAIの活用。

  • AIには継続投資の価値がある

「AIは自然言語処理や無意識のうちにバイアスがかかってしまうという課題はあるが、進化を続けているのでAIには継続投資の価値がある。自動化、レコメンド、予測の3つが適用領域として考えられる」(エイドリアン氏)

4つ目はデータの活用。ただ、データ量は大幅に膨れ上がっており、ノイズもたくさんあるため、データの中から適格なシグナルを見つけることが難しくなっているという。またエイドリアン氏は、データの分析ツールも難しいものが多いので、専門家でなくても使いこなせるツールを使うべきだとした。

  • データをスーパーパワーに変換

そして、5つ目はローコード開発の採用。

「企業にはソフトウェアを開発するリソースが足りないため、ローコード開発で、ローカル開発者(シチズンデベロッパー)を活用できる。ただ、究極の目的は、社内の開発者の生産性を上げることだ」(エイドリアン氏)

  • ローコード革命で開発をより速く簡単に