探査機「オシリス・レックス」が小惑星「ベンヌ」への着地に成功した、と米航空宇宙局(NASA)が発表した。日本の「はやぶさ」「はやぶさ2」と同様に試料を採取して地球に持ち帰る計画で、順調なら日本に続き、小惑星の試料回収の2番目の成功国となる。今月末にかけ、ベンヌ上空で採取の成否を確認する。

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    オシリス・レックスのカメラが捉えた着地の様子。機体が降下し(左)、ロボットアームの先端がベンヌの地表に触れると、小石などが舞い上がった(NASA、米アリゾナ大学提供)

オシリス・レックスは21日午前3時ごろ(日本時間)、地球から約3億2000万キロ離れたベンヌ上空の周回軌道から、北半球にあるクレーター「ナイチンゲール」の中を目指して降下を開始。機体からロボットアームを伸ばして午前7時過ぎに先端を6秒間にわたり接地させ、砂などの試料60グラム以上の採取を試みた。その後、正常に上昇したという。はやぶさ2が地表に弾丸を発射して砂などを舞い上がらせたのに対し、オシリス・レックスは地表に窒素ガスを吹き付ける方法を採用した。

小惑星の試料回収は2010年、はやぶさが世界で初めて成功した。米国は06年に彗星から噴出した試料を回収しているが、小惑星ではこれが初挑戦。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「知識の限界を広げるため、全米から集まった素晴らしいチームが信じられないような挑戦を乗り越えた。産業界、学術界、そして国際パートナーのおかげで、最古の太陽系のかけらを手にした」と述べた。

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    ベンヌへと降下するオシリス・レックスの想像図(NASA、米アリゾナ大学提供)

試料採取の成否は、はやぶさが地球帰還後にカプセル内を調べて確かめたのに対し、オシリス・レックスは機体を回転させて回収装置の重さの変化を調べるなどの方法により、現地で確認する。採取量が不足する場合は、来年1月に別の地点から採取を試みる。3月にベンヌを離れ、23年9月に地球に帰還する。

ベンヌは直径約500メートルで、はやぶさ2が探査した「りゅうぐう」と同様、地球に接近する軌道を持つ炭素質の星。そろばんの玉のような形をし、有機物や水を含むなどの特徴もりゅうぐうと似ているとされる。試料を持ち帰って詳しく分析すれば、太陽系形成や生命の起源の謎を解く手がかりが得られると期待されている。

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    左が小惑星ベンヌ(NASA、米アリゾナ大学提供)、右がりゅうぐう(JAXA、東京大学など提供)。形や表面の様子が、互いにそっくりだ

一方、はやぶさ2は今年12月6日の地球帰還に向け、地球から約1700万キロの位置を航行中。日米は成果を競う一方、回収した物質を交換して分析するなどの協力関係を結んでいる。

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