エクイニクス・ジャパンは10月19日、オンラインによる記者説明会を開催し、新たに代表取締役社長に就任した小川久仁子氏がプレゼンテーションを行った。
日本IBM出身の新社長
小川氏は1989年に日本IBMに入社し、2009年4月にはトランスフォーメーション&オペレーション バイス・プレジデント、2011年にストラテジック・アウトソーシング・デリバリー バイス・プレジデント、2015年にマクロミル 執行役グローバルCTO(最高技術責任者)を歴任。そして、2020年5月にエクイニクス・ジャパン 代表取締役社長に就任した。まず、同氏は日本の現状について次のように説明した。
「IMD国際競争力研究所のデジタル競争力ランキング(9月26日発表)は63カ国中、『ビッグデータ活用』『デジタル人材のグローバル化』『企業の変化迅速性』の項目で最下位となっており、当社として、どのような形で支援できるかが重要だと考えている。一方で、新型コロナウイルスの拡大に伴い、フェイスレス、タッチレス、バーチャルに転換し、ビジネスそのものが変化している。また、生活も変化し、さまざまなものがバーチャルに様変わりしており、バーチャルでのつながりがなければ物事が進まなくなっている。そのような中でサービスの位置づけがより一層重要なポジションになっている」(小川氏)。
米エクイニクスは、インターコネクション(相互接続)の場所をインターネット関連企業に提供するため1998年に設立し、2000年に日本に進出。同社のデータセンター(DC)に対する考え方はInternational Business eXchange(IBX)であり、単なるデータセンターではなく、国境を越えてユーザー同士が取引や協業を行い、新たな価値を生み出す場所と定義している。現在ではインターコネクションが37万8000回線、総売上は6000億円、グローバル56都市圏において214のIBXデータセンターを展開している。
データセンター企業からデジタルインフラ企業への変革
日本では東京に11拠点、大阪に2拠点のIBXDCを展開し、直近ではTY11が昨年7月に開設している。そして、4月には東京と大阪にハイパースケーラー向けDCの開設を発表し、シンガポールの政府系ファンドであるGICとリミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(Limited Liability Partnership:LLP)形態による初期投資額1000億円規模の合弁契約を締結。
これらのデータセンターは、従来のIBXではなく、ハイパースケーラー向けのDCとしてxScaleデータセンターと位置付けており、東京2カ所、大阪1カ所の計3カ所に設け、TY12xは12月、OS2xは2021年第四半期にサービスの開始を予定している。これにより、Alibaba Cloud、Amazon Web Services、Google Cloud、IBM Cloud、Microsoft Azure、Oracle Cloud Infrastructureはじめとするハイパースケーラーを顧客とし、特有のコアワークロード導入の需要に対応していく方針を示している。
そして、同社では相互接続でアクセスするベアメタルサービス「Equinix Metal」の提供開始も明らかにした。同サービスは、同社のプラットフォーム上で自社に必要な物理インフラストラクチャを、ソフトウェアと同様に即時展開することが可能。また、同社のそのほかのサービス構成要素と組み合わせることで、物理・仮想インフラストラクチャ導入の展開方法に関して幅広い選択肢の中から適切なものを選択し、必要なロケーションにインフラストラクチャを設置、あらゆるものと接続できるようになるという。
現在、同サービスはアムステルダム、ニューヨーク、シリコンバレー、ワシントンD.Cの4都市で利用でき、2021年初頭までに14都市で利用が可能になる。
小川氏は同サービスにについて「46か所のグローバルな戦略市場において提供しているソフトウェア定義型のインターコネクションサービス『Equinix Fabric』と直接統合されており、ユーザーは15分以内でサーバやネットワークの設定などができ、専用のベアメタルインフラストラクチャをグローバル規模で展開を可能としている。また、Equinix Fabricに接続することで何千ものネットワーク、企業、クラウドサービスへ低遅延でアクセスできるようになる」と述べていた。
これらの取り組みをふまえ、同社ではこれまでのDC企業からデジタルインフラストラクチャ企業への変革を表明している。これは同社における従来のプラットフォームは「データセンターサービス」と「インターコネクション&クラウド接続」を主に提供していたが、新たに「エッジサービス」を加えていくというものだ。
同氏は「ただのデータセンター企業ではないという前提のもとに、新しくデジタルインフラストラクチャ企業にポジショニングを変えていく。当社が考えるエッジサービスは、インフラストラクチャの作業として必要なネットワーク機器などを設定済みの状態で提供し、ユーザーがログインすれば、すぐに利用できるようなネットワークエッジサービスを展開していく」と説明していた。
そして、最後に小川氏は「いままでのデータセンターのイメージとはまったく異なるコンセプトだ。例えば開発で必要なサーバリソースや接続で必要なネットワークリソースを、クリック1回で構築できる。従来はオンプレミスで行っていたワークロードを当社のIBX上で短時間かつ低コストで可能としており、ユーザーがデジタル化を推進していく際に当社が重要な役割を担うと考えている」と力を込めていた。