ネットワーク機器やエンドツーエンドポートフォリオなどを提供しているノキアソリューションズ&ネットワーク(フィンランド本社、以下ノキア)は10月15日、プライベートイベント「Connected Future 2020」の開催に伴って記者会見を開き、5Gを活用したデモンストレーションやシステムを公開した。本稿では、その中から一部抜粋してお伝えする。
5G対応のリモート3Dホログラム投影
まず、最初に行われたデモンストレーションは、5G対応の遠隔からの3Dホログラム投影によるプレゼンテーションだ。
ノキア代表取締役社長のペッカ・リュンドマルク氏がフィンランドから記者会見会場につながり、同社の5Gソリューションや、ビジョンについてのプレゼンテーションを行った。5Gに対応していることにより、音声とビデオの低遅延な接続が可能で、そこにいるかのように高品質な立体映像だった。
5G SA(スタンドアローン) システム/液体冷却システム
次に目を引いたのは、5Gネットワークを独立して構築する「5G SA(スタンドアローン) システム」。注目したポイントは機体のコンパクトさだ。
また、システム機器を冷媒(液体)で冷却するソリューションも公開されていた。冷媒を「リキッド冷却5Gエアスケール基地局」からを水冷基地局までホースで送り、付属のフィルター内部で循環させることによって冷却を行う。
この際、機器から発生した熱は空気循環器によって外気へと排出される。フィンランドのような寒い国の企業はこの余熱を副産物として利用しているとのこと。
液体を用いた冷却方法は、ファンによる冷却とは異なり、ほぼ無音に近く消費電力も抑えることが可能だとしている。同社によると、ファンによる冷却方式から液体冷却方式に変更することで、冷却エネルギーを90%削減し、TCO(保守・電気代)を97%削減できるという。また冷却時に使う冷媒やフィルタは交換が不要で、メンテナンスコストも削減できる。
クラウド型ローカル5G/プライベートLTEソリューション「NDAC」
最後に紹介するのは、プライベートネットワークとさまざまなアプリケーションを提供する産業向けのクラウド型ローカル5G/プライベートLTEソリューション「NDAC」。
NDACは、プラグアンドプレイの統合サービスとしてのソリューションで、企業の構内で作動する、4Gや5Gに対応した低遅延の超広帯域接続サービスを提供する。物理的な配線作業を行うだけでサービスを利用することができ、モバイルネットワークの設定になじみのないエンドユーザーでも導入しやすくなっている。インターネット上で常時監視する運用サービスも展開しているため、導入後の運用面についても、コストを削減できるとしている。
さらに、モバイルのコネクティビティだけでなく、NDACは、ドローンを活用した上空管理ソリューションや、高精度のインドアポジショントランキングなど、すぐに利用できるさまざまなアプリケーションの提供も行っている。今後、アプリケーションの種類も拡充させていき、さまざまな産業に対応したサービスを展開していく方針だという。
デモでは、同プラットフォームで構築されたプライベートネットワークを活用した、スマートフォンによるビデオ通話を行っていた。この通話システムもアプリケーションとして提供される。
5Gのニーズに対する有効性
記者会見では、デモ以外にも、5Gを構築するのに必要なミリ波への今後の期待について見解を示した。
ミリ波は特定のユースケース(大容量かつ高速、ミリ秒以下遅延、高精度位置情報)に対応することができ、また、港湾のクレーン遠隔制御のようなノマディックなユースケースにとって最適である可能性があるが、多くの関連するユースケースはミリ波にとって課題が多いカバレッジ・浸透性・モビリティ要件を持つものが多いという。
現状では、業界全体でミリ波への明確な関心はあるが、産業ニーズに対するその有効性はまだ評価する必要がある段階だという。同社は、世界中の主要通信事業者と協力し、さまざまな環境でのカバレッジ特性やISD、セルエッジ性能、モビリティといった評価検証を進め、サービスを拡充させていく方針だ。
ノキアの日本事業の責任者である、ノキアソリューション&ネットワークス 代表執行役員社長 ジョン・ランカスターレノックス氏は「日本はすでに世界の5G競争のリーダーであり、 われわれは日本社会の全体的なデジタル変革を加速するのに適した立場にある。今後、5Gを活用して日本の企業や業界をよりスマートにし、新しい社会経済の機会を創出していきたい」と語った。