2020年10月14日、科学技術振興機構(JST)はJST理事長記者会見を開催し、この中で令和2年度(2020年度)の「第2回輝く女性研究者活躍推進賞」に群馬大学を選んだと発表した。この輝く女性研究者活躍推進賞は、女性研究者が活躍する環境を推進する機関を表彰するもの。
群馬大は、男女共同参画を恒常的に発展・定着させる「まゆだまプラン」を2013年から始め、その推進役として男女共同参画推進室を設けた。さらに、これを2020年にはダイバーシティ推進センターに改組し、男女共同参画とダイバーシティの教育研究を進める体制を築いた。この際に、「10年間で女性研究者を定員の20%に、女性役員(理事など)を12.5%に、女性管理職を14.5%まで増やす」という目標を掲げた。
群馬大は前橋市と桐生市に4つの学部・大学院が分散するキャンパス構成のために、各キャンパスに「まゆだま広場」という男女共同参画の拠点を設けて、10年後の目標を達成させるために、両立支援アドバイザーを配置し、相談に応じる体制を築いた。「2019年には相談件数が246件と大幅に増え、子育てしやすい環境づくりが進んだ」(ダイバーシティ推進センター)という。
群馬大大学院の理工学府では、女性研究者を増やすために「女性研究者限定公募」などを実施するなどの工夫を凝らした結果。理工学府の博士課程後期の女性学生が平成24年度(2012年度)には12.3%だった比率が令和1年度(2019年度)には25.8%と約2倍に増えるという成果を上げている。
同時に「理工学府の女性教員・研究者数が同2.0%から6.2%と約3倍に増えた」と、ダイバーシティ推進センターを所管する理事(非常勤)の本多悦子さん(図1)は説明する。
具体的には、理工学府の女性教員を女性限定で公募した結果、開始当初は女性教授が1人だった教員体制から、現在は女性の教授2人、准教授3人、助教8人まで増えている。
この変化は、2017年度から「まゆだま加速プラン」という女性限定の教員募集などを実施し、その女性限定の教員募集で採用した教員には「スタートアップ経費120万円」を提供するなどの研究環境整備費を提供する工夫を加えたことが奏功したようだ。
この女性教員の増加によって、理工学府の博士課程後期の女性学生が増えるという好循環を生むという効果も生まれている(図2)。将来の女性研究者の増加が見込める好循環になっている。
群馬大の医学部・医学府でも、以前は女性教授が0人と、全国立大医学部・医学府の平均値より下回っていたが、2020年5月に女性教授が登用されるなど、その効果が出始めた。現時点では、准教授も3人まで増えている。今後も、医学系の教授・准教授のポストの中で、女性の採用を加速する上位職ボトムアップシステムを2022年まで継続する計画である。
群馬大全体では、女性研究者の共同研究促進事業を進めて、学内で研究助成50万円を提供し、共同研究・委託研究件数を増やす施策も実施している。この結果、日本学術振興会の科学研究費を獲得する採択件数の比率は、「女性研究者の方が男性研究者を上回るという成果を上げている」という。