10月14日~16日にかけて神奈川県のパシフィコ横浜にて開催されているバイオビジネスに関する展示会「BioJapan 2020」にて、目をひく展示があった。ロボットがレールの上を走っており、何かを運んでいる。なにか実験に用いる道具だろうか? 興味が沸いて話を聞いてみた。
これは2013年に設立された慶應義塾大学(慶大)発のベンチャー企業「MOLCURE」のブースにおける展示の様子である。
ブースのデモを見ると一見するとバイオ産業向けロボットベンダーのように見えるが、実は機械学習を活用したAIを用いることで医薬品候補分子の同定を短期間で実現することを可能とするソリューションを提供している企業である。デモを披露していたロボットは実験のプロトコルの生成を表したモチーフとしてAIの活用イメージを見せたものであるとの事であった。
通常、医薬として有用な抗体分子やペプチドは、実験によって何千パターンもの候補分子の中から有用な候補分子を見つけ出すことが求められるが、その有用性の調査には莫大な時間がかかることが知られている。同社のAIソリューションは、ライブラリ構築・スクリーニングを実施後、次世代シーケンサ(NGS)を用いたDNA解析によってビックデータを構築、オーダーメイドのAI構築と解析によって候補分子の発見を行うことを可能とするものである。単なる時間短縮だけでなくAIでの分析により、より多様で新規の候補分子を発見することも可能であるともしており、新薬開発のサイクル短縮などを補助することもできるようになるという。
なお、同社のAI技術は、すでに製薬企業5社での導入がなされており、創薬分野でのさらなる活用に期待が高まっている。