ジェーシービー(JCB)、みずほ銀行、富士通の3社は10月15日、デジタルで管理された個人の属性情報(デジタルアイデンティティー、以下、ID情報)を安全・安心にオンライン取引などで活用できるデジタル社会の実現に向けて、異業種間でID情報を流通・連携する共同実証実験を10月から開始すると発表した。

  • 実証システムのイメージ

    実証システムのイメージ

実証実験では、JCBとみずほ銀行が保有する参加者の名前、住所、勤務先などのID情報を富士通が構築したクラウド基盤上でセキュアに相互交換・連携する仕組みの検証を行い、JCB・みずほ銀行と取引がある富士通の国内グループ社員約100人が参加し、約4か月間実施する。クラウド基盤には、富士通研究所のブロックチェーンを活用した自己主権型/分散型アイデンティティー流通技術「IDYX」を組み込み、構築した。

近年、個人の属性情報を活用した利便性の高いサービスを提供するために、1つのサービス事業者が取得・管理しているデータを他事業者間で相互に連携し流通する新しいデータの活用や在り方が考えられている一方で、利用者が意図しない個人データの流用やプライバシーリスク、不正利用による被害が顕在化してきており、本人確認の重要性が再認識され、また事業者には取引相手の信頼性を正確に証明できることも求められているという。

デジタル化が進み、個人のID情報がますます流通していく中、より安全で信頼性の高いID情報の管理と、利便性の高い相互活用の両立が不可欠となっており、JCBと富士通は2019年からデジタルアイデンティティー領域において共同研究を行ってきたが、複数事業者が持つ情報の管理や信頼性向上の観点から、みずほ銀行を加え、ID情報の相互運用モデルに関する実証実験を行う。

実証システムを介して、JCBとみずほ銀行は自社で保有する参加者のID情報を電子証明書として、参加者に自動発行する。参加者は、JCBとみずほ銀行から取得した電子証明書を項目ごとに自由に秘匿したり、組み合わせたりして、オンライン上でセキュアかつ信頼性のある自身のID情報を他事業者(JCBもしくはみずほ銀行)に連携する。以上の仕組みを体験し、ID情報流通技術の有用性を検証する。

また、実証システムの利用を通じて、アイデンティティー基盤を実現するための、システム構築の要件や運用方法を検証し、実施時期は10月~2021年1月までの4か月間を予定。

  • 実証システムの企業アプリケーション画面

    実証システムの企業アプリケーション画面

  • 実証システムのユーザーアプリケーション画面

    実証システムのユーザーアプリケーション画面

3社の役割としてJCBとみずほ銀行は、実証システムを通してJCB・みずほ銀行が保有する参加者の情報を各社から本人に開示すると同時に、参加者から開示された本人の情報を受領するほか、自己主権型/分散型アイデンティティーのサービス要件、運用方法と新たなサービスモデルを検討する。

富士通グループは実証システムおよび参加者が利用するアプリを開発・提供し、実証実験の運営とシステムの運用を実施することに加え、自己主権型/分散型アイデンティティー基盤を実現するためのシステムの設計と機能評価を行う。

今後、3社は顧客主権で各社が持つID情報を相互に連携し、認証・更新することのできる事業者・顧客双方に利便性の高まるID情報活用の新たなサービスモデルを検討していく。さらに、顧客視点で安全・安心なデジタルエコシステムを構築し、より利便性の高いデータ活用社会の実現に貢献していく考えだ。