ニューノーマル時代において、建物は従業員や利用者間の疾病感染を防ぎ、安全な職場環境を実現しながら継続的に戦略的な施設運営を行う必要性が高まっています。 ジョンソンコントロールズは、施設の冷暖房空調(HVAC)システムを活用し、安全な施設運営を支援しています。

HVACを中心とした建物内感染抑止戦略としては以下のようなものが掲げられています。

  • 外気循環量の増加に着目した換気メソッド
  • エアロゾル感染リスクを低減する空気入替え頻度の算出
  • ウイルスなどの粒子をろ過し室内空気質を向上させるフィルター
  • 病原体を不活性化し感染力を低減する最適な温湿度設定
  • ウイルスを不活性化させる紫外線殺菌照射技術

社内の専門家チームは、建物内の設備機器や防火防災などの安全装置を評価し、カビの発生や排水システムトラブルなど、施設の長期的な操業停止につながるリスクチェックを含め、感染抑止対策が取られているかどうかを判定、リスクを軽減するための適切なアドバイスを行っています。

本稿はHVACおよび照明システムの保守・運用を行う方のために一般的なガイダンスと考慮すべき項目のリストを提供することを目的としたものです。ジョンソンコントロールズでは、疾病対策予防センター(CDC)、世界保健機関(WHO)、米国暖房・冷凍・空調技術者協会(ASHRAE)の勧告に従ってソリューションを提供しています。

ガイダンスを活用した感染対策戦略

ASHRAEの疫学対策委員会では、建物内での空気感染を抑止するために、HVACシステムのガイダンスを作成しました。ASHRAEとCDCによると、COVID-19のような感染症はエアロゾルを介して感染する可能性があることが示されています。HVACシステムを活用し清浄な空気を室内に大量に供給することで、一次感染者から二次感染者への感染抑止における期待が高まり、建物内でのクラスター発生を防止する手法として効果的であるとされています。

ASHRAEは、健康で安全な建物環境を実現し、維持する感染対策戦略の策定を推奨しています。戦略立案に際して、フィルター、建物支援計画、利用者のための安全対策などの重要項目においては信頼性の高いサプライヤーを確保することが重要です。また、ASHRAEは現在停止または待機状態になっているHVACシステムに対し、規格180-20183のガイダンスを適用することを推奨しています。

ASHRAEの勧告を実施することで、空気中の病原体の拡散を効果的に抑制し、施設管理者は公衆衛生に大きく寄与することとなります。

建物内に清潔な空気を取り入れる方法

HVACシステムを通じて清浄な空気の風量を増やすことで、建物全体に病原体が拡散するリスクを減らすことができます。効果的で多面的なアプローチには、以下のようなものがあります。

  • 換気回数の増加:外気の取り入れ量を増やし、フィルターでろ過された再循環空気の量を増やすことで、エアロゾルを減少させ、感染率を低下させます。
  • フィルターの改善:高効率粒子エア(HEPA)フィルターやより良い最低捕集効率(MERV)付きフィルターなどを追加することで、より多くの粒子を捉え、建物内の空気を浄化することができます。
  • UV-C照明による空気消毒:紫外線殺菌照射(UVGI)とは、紫外線(UV-C)を利用して空気中のウイルスや細菌の微生物を不活化し、繁殖させないようにする殺菌方法です。UVGIはエアハンドリングユニットを通過した空気の消毒や、天井の照明器具に設置された紫外線照射装置を介して室内の空気を循環させることで、空気を消毒することができます。
  • 室内管理:温度、室圧、相対湿度を適切に管理することで感染リスクを低減し、利用者の安全に配慮した環境を整えます。

換気率と感染リスクの低減

手術室のようなクリティカルな環境では、換気率を上げることで、空気感染を防ぐことができます。一般的なノンクリティカルな空間にも同じ手法を適用することで、施設全体で感染リスクを低減する効果が期待できます。

以下のグラフは、ライノウイルス、結核、インフルエンザ、SARS(SARS-CoV)、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)が、1時間当たりの換気率が高くなるにつれて空気感染確率が低下していく様子を示しています。

  • ジョンソンコントロールズ

    5,400平方フィート(約500平方メートル)の空間に1人の感染者がいると仮定して、Wells-Rileyの式を用いて計算した空気感染の確率