TISのロボット関連事業を担当するサービス事業統括本部AI&ロボティクスビジネスユニット(ARU)は10月13日、ロボット関連事業に関する事業戦略説明会を開催し、同事業の現状や今後の目標などについての説明を行った。
同社のロボティクス事業は2018年より開始。ロボティクスプラットフォーム「RoboticsBase」の提供を皮切りに、2019年にはロボットのメーカーを問わずに活用することを可能とするマルチロボットインテグレーションサービスの提供を、そして2020年からはロボットを人の代替として活用するためのメソッドなどの提供を行うコンサルテーションサービスを開始するなど、段階を経て、サービス領域を拡大。2020年10月時点で約10社に対してコンサルテーションサービスを提供するところまで成長してきたという。
同事業部ジェネラルマネージャー、執行役員の田島奏氏は自社のロボティクス事業の強みとして、RoboticsBaseを活用することで、ロボットのみならず、IoT機器などとも相互連携が可能となり、かつそれを一元管理することができるようになること、ならびに、複数のベンダーから提供されるロボットを統合管理するコンサルティングの提供の2つを挙げており、これらの2つの強みを組み合わせることで、カスタマーのニーズに沿ったサービスロボットとIoT、AI技術を組み合わせ、実際の業務を行う仕組みを構築するための企画・検証から導入・運用までを提供することが可能となったとしている。
同社の提供するサービスは相手があるものであり、なかなか具体的な事例を公表することは難しいが、今回同社は東京ビッグサイトにて行った実証実験と、国土交通省のスマートシティ先行プロジェクトの一環として行われた羽田空港第3ターミナル(旧称国際線ターミナル)近くの大型商業合施設「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ:HICity)」での取り組みが挙げられた。 東京ビッグサイトでの実証実験は、東京都産業技術研究センター(都産技研)のロボットに協力してもらう形で、RoboticsBaseを活用し、案内、運搬、巡視、清掃の4つの業務における「リスクを含めたコンサルの実施」、「ロボットベンダー交渉」、「異機種ロボットの統合システム管理」、「人力との効果検証」の検証を行ったという。
例えば、運搬業務においては、廃棄物カートをけん引するロボットや、人の後をついていくカルガモ方式のロボットなどによって、人間が作業をするのと比べてどれだけ効率が向上するかについての検証が行われた。その結果、人間だけの運搬では500リットルが限界だったものが人+ロボットの使用となると930リットルまで運搬量が高められることが確認されたという。
一方のHICityの取り組みでは、アバターロボットに欲しい商品を打ち込むと、別のロボットが運搬を行うというロボット間連携の検証をRoboticsBaseを活用して実施。注文を受けるロボットと運搬を行うロボットのカメラ画面の確認や、2つのロボットの行動履歴や充電の状態の把握、ロボットへの指示などの検証が行われたという。
なお、同社ではロボットの活用について、withコロナ時代の到来による、非対面・非接触での業務対応のニーズの高まりや、労働賃金の上昇に伴う人材確保が困難な業務への適用、また遠隔操作による有能な人材の有効活用などの面で、今後、さらに幅広い分野に広がることを期待している。すでに、サービス産業を中心に、新型コロナウイルスの感染対策としての非接触・非対面でのサービス提供に向けた引き合いが高まっているとのことで、同社ではこうしたロボットに対するニーズの高まりを背景に、今後、AIやIoTなどを含めたロボットを活用したドメインとして100億円の売り上げを目指すとしている。