本田財団(石田寛人理事長)は、「第4次産業革命」と言われる「インダストリー4.0」の概念を提唱したドイツ工学アカデミー評議会議長のヘニング・カガーマン博士に2020年の本田賞を授与すると発表した。本田賞は今年で41回目。授与式は11月17日に日本とドイツなど関係国をつなぐオンライン形式で開催され、メダル、賞状とともに副賞として1000万円が贈呈される。
本田財団によると、インダストリー4.0は経済的成長と社会的利益を促進するパラダイムシフトを実現するための方策として、現実世界とデジタル世界を結び付ける概念。ドイツでは 2011年~12年ごろ、インターネットと実世界を結び付けた議論が盛んに行われていた。カガーマン博士が率いるドイツ工学アカデミーがその議論をリードし、13年にはドイツ人工知能研究センター創設者であるウォルフガング・バルスター博士らとともに、インダストリー4.0の概念を確立、提唱した。
カガーマン博士はまた、「戦略的イニシアチブインダストリー4.0実装に向けた提言」の執筆者として、製造業、流通業、物流業、ヘルスケア、社会基盤、農業などあらゆる産業分野でデジタルの力を活用した産業最適化の必要性を提唱するなどした。現在ではインダストリー4.0の発展型としてプラットフォーム型のビジネスモデル「スマート・サービス」や人工知能や機械学習を用いて学習する「自律システム」の普及で主導的な立場を担っているという。
カガーマン博士は1972年、ルートビヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン実験物理学部を卒業。ブラウンシュバイク工科大学物理学員外教授などを歴任している。
インダストリー4.0はカガーマン博士らの主導により、元はリーマンショック後のドイツの産業振興政策の柱となったが、その後世界に広がった。日本の産業政策にも大きな影響を与え、現在では新興国の経済発展にも寄与している。
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