日本マイクロソフトは10月7日、新会計年度の経営方針に関する記者会見を開催した。代表取締役 社長を務める吉田仁志氏は、「お客さまの目線に立ち、寄り添うことで、『デジタルトランスフォーメーション=マイクロソフト』、『マイクロソフト=デジタルトランスフォーメーション』という認識を持ってもらうことを目指す」と、前年度に引き続き、新年度もデジタルトランスフォーメーションに注力することを表明した。
吉田氏は、2021年度の注力分野として、「政府」「物流」「製造」「小売」「中堅・中小企業」を挙げた。いずれの分野においても、AIやクラウドを活用して、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進していく。 中堅・中小企業については、リモートワークの整備の実現に向けて、低価格のサブスクリプションを提供していくという。
顧客のデジタルトランスフォーメーションを推進するにあたっては、「セキュリティ基盤の確立」「ワークスタイル変革」「デジタル人材の育成」「アプリケーション開発の民主化」を軸に、アプローチしていく。
同社のサイバー攻撃をモニタリングする組織では、1日当たり8兆のセキュリティシグナルを分析しており、今年2月から5月にかけては、1.4万を超える日本を狙った攻撃を観測したという。吉田氏は「昨今は内部不正による情報漏洩が増えていることから、ID管理、デバイス、アプリケーションなどあらゆる要素を保護するための包括的なソリューションを提供していく」と語った。
ワークスタイル変革については、今年度は「Next」と銘打って取り組んでいく。新型コロナウイルスの影響でリモートワークの導入が進んだことで、Microsoft Teamsの利用が増えたが、7500万人以上が利用し、会議時間が1日50億分を超えているという。吉田氏は「Microsoft 365やMicrosoft Teamsの利用状況をAIによって分析することで、業務の効率化を図ることもできる」と述べた。
人材育成については、「2030年には最大79万人の人材不足が見込まれ、2050年には労働人口が現在の6割に減る」との政府の調査結果を示し、吉田氏は「社会人のデジタル人材育成に取り組む」と語った。
経営層向けにはAI関連のスクールを、エンジニア向けにはトレーニングをそれぞれ拡充する。また、学生に対しては無償のオンライントレーニングを提供し、教員に対してはITスキールを習得するためのサポートを提供していく。
「アプリ開発の民主化」の基盤となる製品は、ビジネスアプリケーション開発プラットフォーム「Microsoft Power Platform」だ。同製品は Power Apps、Power Automate、Power BI でデータの収集から解析・予測までロー コーディングで実現する。
「Microsoft Power Platform」によって、ビジネスユーザーが簡単にアプリケーションを構築できるようにする。「人材が不足している今、ビジネスユーザーがアプリケーションを作らないと、ITは回らない」と、吉田氏は指摘した。神戸市では、職員自身が新型コロナウイルス感染症対策に関連する4つのサービスを構築したそうだ。
吉田氏は、同社のビルディング・ブロックをベースに、アプリケーションを「アウトソース」から「インソース」に変えていくことで、「ユーザーにITを戻していきたい」と語った。
ビルディング・ブロックは、Microsoft Azure、GitHub、Microsoft Power Platform、Microsoft 365、LinkedIn、Microsoft Dynamics 365から構成される。エッジのデータをAzureに収集して、Dynamics 365で分析することで、生産性を上げることを実現できるという。「われわれのビルディングブロックでは、レゴのようにソリューションを組み合わせることで、サービスを利用できる」と吉田氏。
また、吉田氏は「われわれは63のデータセンターを展開しているが、これは世界規模と言える」と、同社のデータセンターの規模もアピールした。63のリージョンは、Amazon Web ServicesとGoogleのリージョンの合計よりも多いという。さらに、今後もデータセンターへの投資は緩めないとしている。
クラウド市場では、Amazon Web ServicesやGoogleとしのぎを削っているが、「ソリューションをもって、クラウドシフトを進められるのはわれわれだけ。われわれは企業が次のステップに進むための支援の中で、クラウドを提供していくことができる」と、吉田氏は競合に対する強みを語った。