国立科学博物館(科博)は茨城大学、茨城県農業総合センター農業・食品産業技術総合研究機構、岩手大学との共同研究により、茨城県特産の赤ネギ品種「ひたち紅っこ」から新しいアントシアニンを同定したことを発表した。 さらに、 このアントシアニンを含む赤色の部分(葉鞘)の抗酸化活性を測定したところ、 従来の白ネギの8倍以上であり、 また同時に総ポリフェノール含量も2倍以上であることも判明したという。

  • 茨城県特産赤ネギ品種”ひたち紅っこ”

    茨城県特産赤ネギ品種”ひたち紅っこ” (出所:国立科学博物館)

同成果は、国立科学博物館植物研究部の水野貴行氏、茨城大学大学院農学研究科の中根理沙(修士2年)、茨城県農業総合センター園芸研究所の貝塚隆史、農業・食品産業技術総合研究機構食品研究部門の石川(高野)祐子、岩手大学農学部の立澤文見 准教授、茨城大学大学院農学研究科の井上栄一 教授、国立科学博物館植物研究部の岩科司氏らによるもの。詳細は園芸学会が出版する和文雑誌「園芸学研究」に掲載された。

アントシアニン色素はこれまで植物から700種類以上が報告されており、 ブルーベリー、 赤ワインなどで多くの機能性が報告されている。またタマネギなどの野菜でもフラボノイドが機能性物質として多く含まれる。今回の研究ではひたち紅っこから4種類のアントシアニンと5種類のフラボノイド成分を分離し同定。 それらの成分のうち、 もっとも多く含まれているアントシアニンはこれまで自然界で報告されたことのない新しい色素であることを確認したという。

  • 構造決定された新規のアントシアニン(シアニジン 3-O-(3ʺ-アセチル-6ʺ-マロニル)-グルコシド)

    構造決定された新規のアントシアニン(シアニジン 3-O-(3ʺ-アセチル-6ʺ-マロニル)-グルコシド)(出所:国立科学博物館)

また、高い抗酸化活性が知られているフラボノイドの一種であるクェルセチンの配糖体が高濃度に含まれていること、ならびに、ひたち紅っこの赤色の葉鞘部の抗酸化活性は、従来の白ネギの葉鞘部と比べて8倍以上であることも確認したという。 赤ネギは葉鞘部が鮮やかな赤色を呈する長ネギで、茨城県にて明治時代より独自に栽培されてきた。茨城県農業総合センター園芸研究所では、 この在来系統をもとに、より安定的に発色し、在来系統よりも栽培しやすい品種として「ひたち紅っこ」を育成、 2007年に品種登録しており、近年では、茨城県独自のネギ品種として生産増大が期待されるようになってきたとのことで、今回の高い機能性などにより、今後、注目度が高まることが期待される。

  • 赤ネギ品種”ひたち紅っこ”および白ネギ品種”夏扇パワー”の地上部および地下部における総ポリフェノール含量とH-ORAC 値

    赤ネギ品種”ひたち紅っこ”および白ネギ品種”夏扇パワー”の地上部および地下部における総ポリフェノール含量とH-ORAC 値(出所:国立科学博物館)