中国最大のみならず世界最大のディスプレイメーカーである中BOE Technology Group(BOE)は2020年9月末に、中国のCEC Pandaが保有する4つの液晶ファブのうち、2つのファブの買収提案を行ったことを発表した。

具体的には、南京の第8.5世代ファブであるCEC Panda Flat Panel Display Technology(南京G8.5)の80.831%の買収提案と、成都の第8.6世代ファブであるCEC Panda Display Technology(成都G8.6)の51%の株式の取得についての提案である。

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    BOEが買収提案しているCEC Pandaの2つのファブの概要 (出所:DSCC)

現在、南京G8.5の株式は花東テクノロジーが57.646%、China Powerが17.168%、南京CEC Pandaが6.017%の割合で保有している。また、今回の取引の一部とならない同ファブの株主の1社に7.718%を保有するシャープがいることは注目に値するとの見方を米国のディスプレイ市場調査会社DSCCは示している。一方の成都G8.6については、成都先端製造、Konggang Xingcheng Group、Konggang Xingcheng Construction Managementが保有している合計51%の株式を取得する予定だという。

BOEは今回のファブ取得について、これらのファブは、BOEにとって初めてとなる酸化物TFT-LCDラインであり、これによりBOEはテレビおよびIT市場でより高度な製品の提供が可能になると説明している。また、有機ELテレビ向けファブを構築する際も酸化物TFTは必要となるため、将来に向けた布石と捉えることができる。

さらにこれまでの同社ファブはIPSモードが主であり、新規取得する2ファブはVAモードによる製造ラインであり、製品ポートフォリオの面からも、IT機器向けでのポジション強化につながるほか、IPSは曲面ディスプレイには適していないが、VAは曲面ディスプレイにも適用可能であり、そうした新しい分野に対して進出しやすくなるというメリットもあると見られている。

DSCCによると、CEC Pandaの生産能力の1部がBOEに移ることで、BOEの液晶パネル市場における強固なトップポジションの構築につながるという。なお、今回の買収については、具体的な買収価格は明らかにされておらず、実際の取引にはBOE株主の承認が必要であるため、買収の成立には不確実性が残る状態となっている。

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    パネルメーカー各社の液晶パネル生産能力シェア推移予測。CEC PandaのBOEによる買収に伴う生産能力移管が2020年末に行われると仮定して取得前(左)と取得後(右)のシェアを比較 (出所:DSCC)