富士通は10月5日、業務プロセスや組織、企業文化・風土を変革する全社DXプロジェクト(Fujitsu Transformation:フジトラ)を7月に立ち上げ、2020年10月より本格始動したと発表した。
フジトラでは、カルチャーの変革にフォーカスし、さまざまなフレームワークを導入・展開「部門間の縦割り」、「オーバープランニング」などの硬直化した社内カルチャーを、パーパス(使命・目的)、デザイン思考やアジャイルなどのフレームワークを全社的に導入・展開して変革していくという。
変革の対象は、新事業の創出から、戦略事業の成長、既存事業の収益性強化、様々なプロセスの標準化・効率化、人事制度や働く環境まで、経営・現場の重要課題で、そのために同社は2023年3月までの3年間に1000億円を投資する。
代表取締役社長/CDXO 時田隆仁(ときた たかひと)氏は、「フジトラ」に取り組む理由について、「富士通は大企業だが、縦割り、サイロなど、事業を単視眼的に見がちなのが、富士通の大きな欠点であり、弱点だ。事業に横ぐしを指すのは簡単にはいかない。それぞれの事業に参加している一人一人が主役なんだという意識の改革をやることが重要だ」と述べ、目的については「社長就任時にIT企業からDX企業になると宣言した。いままでの富士通の伝統的点なIT企業から、世界、社会に対してテクノロジーを通じてWell-being(ウェルビーイング)を提供する企業になりたいと思っている。DXによって暮らしを豊かにしていくために、富士通が中心的な役割を果たしていきたい。AI、IoTなどのデジタルテクノロジーだけでなくプロセス、制度、風土、体質を変えていくことを同時に行う必要がある。富士通自身がDXに取り組んでいる姿を社会に示して、リファレンスにすることで、社会に貢献していきたい」と語った。
このプロジェクトでは、代表取締役社長(兼)CDXO 時田隆仁氏と2020年4月にSAPジャパンから入社した執行役員常務 CIO(兼)CDXO補佐の福田譲氏のリーダーシップのもと、部門・グループ・リージョン横断で富士通グループの変革に取り組む。
福田氏はプロジェクトにおいては、「経営のリーダーシップ」、「現場の叡知を結集する」、「カルチャーの変革にフォーカス」の3つが重要だとした。
現場の叡知を結集するために、主要な事業部門をの代表であるDX Officer(DXO)を17名を選定。CDXO、CDXO補佐とDXOをつなぐ役割として、CEO/CDXO直下のCEO室にDX推進組織であるCDXO Divisionを設置。この組織では、デザイナー、アジャイルコーチ、営業・SE、社内IT、財務経理、広報IRなどの多様な人材をDX Designerとして選出し、DX Officerとともに活動を推進する。
DXは、既存の強い事業の収益性をより高めて方向と、非連続に事業を立ち上げ成長させていく成長事業に分けて推進。
福田氏は「DXのXの部分であるトランスフォームが重要だ。デジタルはそのための方法だ。DXは競争上の優位性を確立することで、顧客体験、オペレーショナルエクセレンスの優劣が企業の利益率に大きな差を生む。最速でこれらを両立させているFutureReady企業を目指す」と述べた。
福田氏はFutureReadyを実践するために、「レガシーシステムの刷新とともに社内外のプロセスを見直しデジタル化する」「CX(顧客体験)変革を進める」「CX施策、既存サービス・製品の革新、新たな事業・ビジネスモデルの試行/立ち上げる」「新しい環境で、事業を創造する」という4つの改革を進めるという。
そのために、世の中で有効な方法論であるとされるDesign Thinking、Agile、Data Science、Voice(全員参加型、多くの人の声を活かす)、Work Life Shift、Ecosystemを活用していくという。
福田氏は「制度などが既存の強い事業に最適化されすぎている」と、同社の課題を語った。
社内外のプロセスを見直しデジタル化では、グローバルの基幹システムをシングルERPに統合。全員参加型にするために全社の意見を吸い上げ、AIで分析する仕組みである「Voice」を導入する。
Voiceを使った働き方に改革のアンケート調査では、37000名の社員のアンケートを取得したが、ネットワークの課題に関しては、2000件程度のコメントが寄せられたという。
福田氏は「それぞれのコメントを30分も眺めれば、およそどのような声があるのか、どんな施策が有効かがわかる」と語った。