lead=米VMwareは2020年9月29日から3日間の日程で、年次テクニカルカンファレンス「VMworld 2020」をオンラインで開催している。「Possible Together」をテーマに掲げた今回は、予測不可能な世界であっても、テクノロジーと人々の連帯で新しい未来を構築していくことの重要性を強調。本稿では、基調講演の内容をお届けする。

米VMwareは2020年9月29日から3日間の日程で、年次テクニカルカンファレンス「VMworld 2020」をオンラインで開催している。「Possible Together」をテーマに掲げた今回は、予測不可能な世界であっても、テクノロジーと人々の連帯で新しい未来を構築していくことの重要性が強調された。

基調講演に登場した米VMwareのCEOであるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏は、「2020年は世界中が混沌としている。しかし、これまでの日常が根底から覆された今だからこそ、(われわれは)デジタルによるイノベーションで社会を支援していくことが重要だ」と訴えた。

Tanzuがモダンアプリ開発を加速させる

今回のVMworldでは、「インフラとアプリのモダナイゼーション」「マルチクラウド対応の強化」「新たな技術プロジェクト」「セキュリティ」など、多岐にわたる分野で発表が行われた。

インフラとアプリのモダナイゼーションについては、2019年に公開した「VMware Tanzu(以下、Tanzu)」のパートナーシップの拡大とポートフォリオを発表した。

Tanzuはオープンソースのコンテナ・オーケストレーションシステム「Kubernetes」上で、モダンアプリケーションの開発、実行、運用管理を一元的に支援するフレームワークである。パートナーシップの拡大では「VMware Cloud on AWS」「Azure VMware Solution」に対するTanzuの正式サポートを、「Oracle Cloud VMware Solution」ではプレビュー サポートをそれぞれ提供する。

Tanzuには、近年買収した「Bitnami」「Heptio」「Pivotal」「Wavefront」の技術が包含されている。Kubernetesを「vSphere with Tanzu」としてVMware vSphereに組み込むことで、あらゆるアプリケーションに対応する、単一のプラットフォームを提供していく。

ゲルシンガー氏は、「現在、開発者はコードの記述に1日平均4時間を費やしている。しかし、Kubernetes(vSphere with Tanzu)を活用することで、こうした作業から解放される。開発者は(Kubernetesの)エンタープライズ グレードのトレーニングをする必要もなく、迅速なアプリ開発が可能になる」と語る。

  • 米VMwareのCEOであるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏

マルチクラウドの自動管理機能を強化

マルチクラウド対応の強化に関しては、構成管理自動化ツールを提供する米SaltStackの買収を発表した。今後はSaltStackの機能を、VMwareのクラウド管理製品である「vRealize」に組み込む。これにより、ソフトウェア構成管理とインフラおよびネットワーク自動化の機能を大幅に拡張できるとしている。

かねてからゲルシンガー氏は、マルチクラウド管理の自動化の重要性を強調している。基調講演では、企業のマルチクラウド環境に対する意識が大きく変化していることを紹介。米国の連邦住宅金融抵当公庫が、仮想環境を前年比3倍に拡大させたことに言及し、「マルチクラウドが、マルチ“サイロ”にならないよう留意する必要がある。そのためには(vSphereによる)一貫した仮想基盤の戦略が必要だ」と説いた。

VMwareは「Amazon Web Services(AWS)」をはじめ、「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform(GCP)」「IBM Cloud」「Oracle Cloud」でもvSphereの動作環境を提供している。また、AWSではTanzuもサポートしているため、Kubernetesクラスタの運用と管理を一元化できるという。なお「Google Cloud VMware Engine」「Oracle Cloud VMware Solution」CloudでもTanzuのプレビュー サポートを提供し、段階的に利用可能になるとのことだ。

さらに、ディザスタリカバリーの領域では、オンプレミスのvSphereワークロードを、VMware Cloud on AWS上で保護する「VMware Cloud Disaster Recovery」も発表した。これはAmazon S3ストレージにSaaS(Software as a Service)ベースの管理製品群を組み合わせ、ITシステムの耐障害性を大幅に向上するDisaster Recovery as a Service(DRaaS)である。本番サイトとディザスタ リカバリサイトの両方で一貫したVMware運用が可能になるという。

Carbon Black Workloadの全機能を6カ月間無償で提供

また、新たな取り組みとして、「Project Monterey(以下、Monterey)」も発表した。これは、人工知能(AI)や機械学習(ML)、5Gアプリケーションなど次世代技術の要件に対応する技術プレビューである。その第1弾として発表されたのが、ネットワークアクセラレーションであるSmartNICのサポートだ。VMware ESXiをSmartNIC上で実行できるようにする。

  • 「Project Monterey」の概要

これにより、ハイブリッド クラウド プラットフォームである「VMware Cloud Foundation」はx86プロセッサ上でコンピュートの仮想化を維持しながら、ネットワークおよびストレージI/O機能をSmartNICにオフロードすることが可能になる。今後は、Intel、NVIDIA、Pensando Systems、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Lenovoなどのパートhttps://news.mynavi.jp/article/20200928-1350271/う。

またセキュリティ分野では、2019年に買収したCarbon Blackの機能を、VMware vCenterに直接組み込み「Carbon Black Workload」として提供する。

Carbon Blackはプロセスやアプリケーション、ネットワーク、ファイルなどで発生するイベントデータを解析し、脆弱性評価をリアルタイムで実行する。エージェントレスで稼働するので攻撃対象とはならず、インフラ内に組み込むのでエンジニアが設定や構築の作業をする必要がない。

なお、「vSphere 6.5」と「VMware Cloud Foundation 4.0」のユーザーは、「VMware Carbon Black Cloud Workload Essentials」の体験版を6カ月間無償で利用できる。さらに、Kubernetesワークロードの保護を強化するための新たなモジュールを含むCarbon Black Cloud Workloadの拡張製品を、今年の後半に発表予定とのことだ。

  • VMwareのセキュリティ戦略(概要)。ネットワーク、エンドポイント、認証、ワークロードの全方位からセキュリティ機能を提供していく戦略だ