国内量子コンピュータ市場の2020年度における規模(サービス提供事業者売上高ベース)は62億円となる見込みであり、2030年度には2300億円に達するという。矢野経済研究所が9月29日に発表した、同社の調査に基づく予測による。
同市場では、金融や化学、EC(電子商取引)、製造(特にシミュレーション)、物流、学術用途を中心に、積極的な実証実験を通じて、材料計算やシミュレーションなど、量子コンピュータ向けのアプリケーションが出てきているという。
また、医療分野では新型コロナウイルス(COVID-19)の感染シミュレーションを始めとする実証実験が登場するなど、産業界を問わず利用用途の探索に取り組み始めているとのことだ。
今後、国内量子コンピュータ市場は急速に拡大するというが、その前提要件となるのは、ハードウェアの進化や開発環境の整備に加えて、ハードウェアの能力を引き出すアプリケーションと利用を希望するユーザー企業をいかに増やしていくかにあると同社は指摘する。
同市場規模は2025年度には430億円、2030年度には2300億円に達するとのこと。
2025年度には、金融や化学などの先行分野においてイジングマシンを中心に実証実験フェーズから本番環境での活用フェーズへと移行する動きが始まるという。
また、エネルギー分野を含めた複数の分野において、特定業務を対象とした実証実験から対象範囲を広げた実証実験へと範囲を拡大していく他、化学分野を中心に、2025年度後半に登場する可能性のあるNISQ(量子ゲート型の量子コンピュータ)をシミュレーションに使用すべく、量子化学計算や量子機械学習を利用した実証実験が登場し、増えていくと同社は見ている。
2026年度以降は、金融分野ではダイナミックプライシングの他、製造分野では大規模な数値流体力学や空力特性を使用した高精度なシミュレーション、EC分野ではレコメンドエンジンでの利用なども本格化していくとしている。
またエネルギー分野では、NISQの登場に伴い、2027年度後半から新機能材料の探索や人工光合成(光合成を人為的に行う技術)の基礎研究での使用、最適なエネルギーミックスの実現を始めとする省エネの高度化に加え、医療分野では超早期診断など複数分野でNISQを使用した実証実験や本番運用が本格化するものと同社は予測している。
2030年度には、車両用バッテリーの開発での利用や、医療分野での本格的な量子コンピュータの使用が始まり、革新的な治療法など社会的に大きなインパクトのある取組みが徐々に登場してくると同社は見解を示した。