中部電力とKDDIは9月28日、変電所における現場業務の効率化とレジリエンスの強化に向け、5Gを活用した共同検証を10月1日から開始すると明らかにした。両社は、中部電力パワーグリッドの大高変電所と中部電力の研究所(ともに名古屋市緑区)の2拠点に、高速・大容量、低遅延、多接続の特性をもつ5G環境を構築し、検証において変電所の実環境における5Gの通信性能の検証とともに、ロボット・高精細カメラ・スマートグラスなどを用いた遠隔からの巡視や監視、作業支援などの実運用を見据えた検証を行う。

電力業界では現場業務の安全確保や効率化に加え、災害発生時の迅速な設備復旧などが課題となっており、中部電力パワーグリッドでは改善施策の1つとして、変電所の現場業務についてロボットによる遠隔監視・遠隔診断などの開発に取り組んできた。

一方で、従来の無線によるロボットの遠隔操作にはリアルタイム性に課題があり、大量かつ低遅延な情報伝送を必要としていたことから、両社は5Gと最先端技術で多様な課題を解決するための検討を開始。検証期間は10月1日から2021年1月21日を予定し、検証では5G環境を構築した変電所および研究所において、大型変圧器や建物構造物などによる通信影響を調査。

また、変電所における遠隔巡視や監視・作業支援などのユースケースを想定した「遠隔からの巡視ロボット運転操作」「高精細カメラやスマートグラスによる遠隔監視・作業支援」「MEC活用によるAI分析」の3つの検証を実施し、有用性・利便性を評価する。

  • 検証のイメージ

    検証のイメージ

遠隔からの巡視ロボット運転操作では、現場業務の効率化や災害時の迅速な情報収集を目的に5Gの高速・大容量、低遅延性能を活用し、中部電力と三菱電機で共同開発中の巡視ロボットの遠隔運転操作を行う。これにより、リアルタイム性が要求される遠隔からの運転操作の有用性を検証する。

高精細カメラやスマートグラスによる遠隔監視・作業支援については、5Gの高速・大容量性能を活用し、変電所の確認箇所を高精細カメラで撮影して遠隔監視を行い、高精細映像による遠隔監視の有用性を検証する。また、5Gの高速・大容量、低遅延性能を活用することで、現場作業者が装着したスマートグラスの視界を遠隔にいる作業指示者に高精細映像で共有するとともに、作業指示をリアルタイムにスマートグラスの画面上へ表示することで、リアルタイム性が要求される遠隔からの作業支援の有用性を検証するという。

MEC(マルチアクセスエッジコンピューティングの略称で、通信端末に近い場所にサーバを配置することで通信の遅延時間を短縮させる技術)活用によるAI分析に関しては、不審者の侵入監視や設備異常の早期検知、作業員の安全確認などを目的に、低遅延環境にある5GのMECを活用し、カメラからのストリーム映像をAIで解析。これにより、MEC活用によるAI分析の有用性を検証する。