新型コロナウイルスの収束のめどが立たない中、そうしたコロナ禍における新たな商談機会の創出を目指し、パナソニックが参加体感型バーチャルショールームの本格運用を2020年9月1日より開始した。

同ショールームは、パナソニックセンター東京の4階に設置されている法人顧客向けのビジネスソリューションズフロア「未来区(MIRAIKU)」をまるごとバーチャル化したもの。未来区は2019年3月にリニューアルオープンしたBtoB向け最新ソリューションの展示フロアで、昨年度は2000社以上の法人企業が来社し、同社のソリューションを体験してもらったというが、2020年に入って世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、リアルでの来場が困難となったことを受け、オンラインを活用したバーチャルショールームの開設に至ったという。

  • バーチャル未来区

    パナソニックのバーチャルショールームの全景

基本的に、リアルの未来区に設置されているソリューションはすべてバーチャル空間上で紹介可能となっており、バーチャル空間の構成もリアルとほぼ同様で、ロボットのような人に寄り添うテクノロジーが実現する生活シーンを体験できる「SMALL EARTH」、高齢化や労働力不足、省エネルギーなど社会課題の解決に向けたeモビリティの紹介を行う「MOBILITY FOSTERS ABILITY」、製造、物流、流通業界における社会的課題の解決を目指す「GEMBA PROCESS INNOVATION」、そして未来の都市機能の一例として未来区のコンベンション施設を紹介する「CITY COMPLEX」といったリアルで用意されているエリアを体験することができるようになっている。

  • バーチャル未来区

    アイコンを移動させないと、映像が流れていても、音声が聞こえない仕組みで、音量が大きいと思ったら、ちょっと離れると小さくなる

また、オンライン上での取り組みとして、来場者と最初に落ち合う「CENTRAL LOBBY」のほか、2018年に100周年を迎えたパナソニックの次の100年に向けた思いを体験できる「VISION THEATER」、そしてオンラインだとコミュニケーションが一方通行になりがち、ということで、実際に来場者とさまざまな手法でコミュニケーションをとることを可能とする「COMMUNICATION ZONE」といったエリアも用意されており、各エリアはリアルとも組み合わせた形でのコミュニケーションも可能で、そのためのツールも用意されているとする。

  • バーチャル未来区
  • バーチャル未来区
  • オンライン上のバーチャルショールームと言いつつも、リアルの未来区とも接続して、実際のデモを見るといったことも可能

特に、リアルとバーチャルのベストミックスで商談を行える環境が整っていることを強調しており、例えばオンラインアテンドとして、日本語のみならず、英語や中国語での対応も可能なほか、リアルタイムでGoogle翻訳による字幕表示機能を活用することもでき、翻訳可能な言語であれば、英語や中国語に限らず、対応することも可能だとしている。また、名刺交換をしたいというニーズもあることから、QRコードを活用した手軽なオンライン名刺交換機能も搭載している。

  • バーチャル未来区

    アンケートのほかにオンライン上での名刺交換機能なども搭載している

基本的にはCENTRAL LOBBY→VISION THEATER→SMALL EARTH→MOBILITY FOSTERS ABILITY→COMMUNICATION ZONE→GEMBA PROCESS INNOVATION→CITY COMPLEXといった順番に各エリアを回っていくツアーが用意されているほか、特定エリアのみにこだわって、そこで重点的に話し合う、といったことも可能だという。

また、体験型と銘打っているのは、その仕組みそのものに特徴があるため。同バーチャルショールームのベースとなっているのがSpatialChat(スペチャ)。カメラの映像を自分のアイコンとして活用するほか、聴きたい音声(音源は人でもなんでも可)にそのアイコンを近づけると、音量が大きくなり、遠ざかると、小さくなるといった仕組みが搭載されており、ライブ感を感じることができるといった点など、多人数参加型のオンラインゲームなどに感覚としては近いものがある。

ちなみに、9月1日より本格稼働となっているが、9月24日時点ですでに20社ほどが来場しているという。また、海外からも実験レベルではあるが、問い合わせがきており、回線状況などを確認して、問題がなければ現地スタッフなどに案内をしてもらう、といったこともできる体制が整ってきたとしている。

ただし、基本的にはパナソニックの担当営業経由で来場申し込みを行って、スケジュールの調整などを経て、実際のバーチャルショールームへのアクセスということとなるので、来場したい、と思ってから、若干のタイムラグが生じることになることに注意が必要だという。また、現在はそこまで来場企業数が多くないため、時間などでバッティングすることはないが、将来、複数の顧客が別々の目的で同時刻来場することも見据えて、複数の同じ仕様のバーチャルショールームを用意することが可能となっており、他社の人間に来場していることがバレる、といったことはないとのことである。

なお、パナソニックでは、顧客側にとってもオンライン活用を模索しているところがあり、単なるソリューションの商談のみならず、そうしたニーズなどにも応えていくことで、コロナ禍における少し先の未来を見てもらって、それを元にした新たな時代の関係構築を進めていきたいとしている。