名古屋大学(名大)は9月23日、ワイヤレス電力伝送(WPT)システムへの応用を見据えたマイクロ波電力の受電に適したノーマリオフ型HEMTを基本とするGaN整流素子の作製プロセスを確立し、整流動作を確認したと発表した。
同成果は、同大未来材料・システム研究所の天野浩 教授(未来エレクトロニクス集積研究センター・センター長)を代表とする産官学(大学5機関、国研1機関、企業6 機関)からなる研究チームの成果。内閣府が創設した戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期の課題「IoE(Internet of Energy)社会のエネルギーシステム」における研究開発項目「エネルギー伝送システムへの応用を見据えた基盤技術」の委託を受けたものとなる。また、同プロジェクトに参画している金沢工業大学(金工大)は高い電力変換効率のレクテナ(マイクロ波を直流電流に整流変換するアンテナ)を開発したことを別途発表しており、これらの成果については、2020年9月24日開催の電子情報通信学会マイクロ波研究会および2020年10月7日開催の電子情報通信学会無線電力伝送研究会で発表される予定としている。
今回開発されたGaN整流素子は3.5W(電極幅1mm換算)の半波整流動作を確認したとするほか、金工大開発のレクテナに適用したシミュレーションにおいて、高い受電効率の受電回路を構成しうる示唆も得たという。
今後は整流素子の性能向上と大電力化を進め、マイクロ波整流回路技術と組み合わせることでGaNによる10Wクラスのマイクロ波帯ワイヤレス電力伝送システムの実証を目指すとしている。ワイヤレス電力伝送(WPT)技術は非接触の電力供給技術として期待されているが、この技術が一般的になり、送れる電力量と距離が延びれば、室内にある多くの機器やセンサが必要とする電源コードや電池交換が不要になるほか、屋外の移動型ロボットや自動輸送機器に搭載するバッテリーも小さくできるなど、電子機器、電気機器の使い勝手の向上につながる可能性がでてくると研究チームでは説明している。