外出の自粛が続いた結果、若者を中心に平日と休日の間の“時差ぼけ”が解消された一方、生活が朝型化した人はやせ、夜型化した人は太った―新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大のこうした影響が、早稲田大学理工学術院などの研究グループによる約3万人の調査で浮かび上がった。夜型生活がダイエットの敵であることが実際にうかがえる結果となった。
早大の柴田重信教授らのグループは、外出自粛やテレワーク、オンライン授業などによる生活リズムの変化が、平日と休日の生活時間の差「社会的時差ぼけ」に関するこれまでの知見を大規模調査で検証する機会になると考えた。そこで健康管理のためのスマートフォン用アプリ「あすけん」を開発した株式会社askenと共同で、このアプリを利用した10~70代の男女を対象に5月25日から6月1日までの間、外出自粛による変化に関するアンケートを実施。3万275人から有効回答を得た。
その結果、10~30代では平日の就寝や起床の時刻が遅くなり夜型化。結果的に休日との間の社会的時差ぼけが大きく緩和されたことが分かった。特に10代では自粛前に平均約1時間あった平日と休日の生活時間の差が、約20分まで短縮していた。
平日の睡眠時間は全年齢で増加していた。ただ、ぐっすり眠れたかなどの「睡眠の質」が改善したと感じた人は全体の2割程度にとどまった。グループは、自粛による精神的な苦痛やストレスが影響したとみている。
また、早寝早起きで朝型化した人がやせ、逆に夜型化した人は太る傾向がみられた。太った人はやせた人に比べて活動量が低下し、ダイエットに挑戦しなかったと答えた人が多かった。間食が増え、睡眠の質も低下したという。
一方、睡眠不足や社会的時差ぼけは肥満の要因とされているが、今回の調査ではこれらの間に関係性はみられなかった。柴田教授は「夜型化が体重に特に影響するというのは発見だ。夜型化やそれに伴う活動量、間食、睡眠の質の変化が影響したようだ」と述べている。
グループの田原優准教授は「3万人という大規模で、生活リズムと体重との相関を調べたのは貴重な機会となった。さらに食事内容のデータを調べ、体重変化との関係を明らかにしていきたい」としている。
グループは日々の生活リズムと食事の時間や内容を基に健康増進を図る「時間栄養学」を研究。近年、若者の社会的時差ぼけが平日の通勤、通学による早起きや睡眠不足、休日の夜ふかし、朝寝坊による夜型化により問題になっているという。学業成績の悪化や、生活習慣病との関連も指摘されている。
成果は8月29日にオンラインで開催された日本時間栄養学会学術大会で発表された。早大などが9月11日にプレスリリースを発表した。
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