NVIDIAが半導体IPベンダであるArmを、ソフトバンクグループより最大400億ドルで買収することで合意したが、最大額での取引となれば、半導体史上における最高額の買収となるが、この買収が実現されるにはいくつかの課題を解決する必要があるとの分析結果をIC Insightsが公開した。
ちなみにこれまで半導体業界における買収劇でもっとも高かった案件は途中で破談になったケースを除くと、2015年のAvago TechnologiesによるBroadcom買収で370億ドルで、次いで2016年のソフトバンクによるArm買収(320億ドル)となっている。
数年前、QualcommはNXP Semiconductorsを440億ドルで買収しようとしたが、米国との貿易戦争に突入した中国が、承認を遅らせ続けた結果、2018年7月に買収そのものが破談となった。
また、2018年には米国のトランプ大統領は、携帯電話技術における米国のリーダーシップを脅かす可能性がある、という前提で、当時シンガポールに登記上の本拠地を置いていたBroadcom(Avago)によるQualcommへの敵対的買収入札を阻止するといった動きを見せたこともある。
NVIDIAのArm買収は、こうした世界的な貿易摩擦の影響を考慮する必要があるほか、自国の技術保護を掲げる各国での独占禁止法審査手続きを考慮する必要もある。
さらに、Armの一顧客であったNVIDIAが、今度は同じ顧客という位置にいた別の顧客企業に対して上の立場になることで、Armの中立性が損なわれる可能性があると、多くの半導体メーカーが懸念を抱くこととなる。NVIDIAは買収を明らかにした際、Armと、そうしたほかの半導体メーカーとの取引に介入せず、Armが顧客と従来どおりの関係を維持できるようにすることを約束したほか、米国企業の傘下となることで、中国勢に対する米国政府による禁輸措置に引っかかる可能性に対しても、英国発の技術であり、米国の規制対象にはならないと主張している。しかし、規制対象になるかどうかはNVIDIAが決めるのではなく、米国商務省が決めることである。そのため、Armの顧客企業は、NVIDIAのこうした発言を額面のまま受け止めることはリスクが高いと言えるだろうとIC Insightsでは見解を示している。