米Nutanixは9月9日、同日~同11日の期間でオンラインで実施する年次のユーザーカンファレンス「Global .NEXT Digital Experience」での発表内容を日本のメディア向けに発表した。オンラインによる記者説明会には米Nutanix 共同創設者、会長兼CEOのDheeraj Pandy(ディラージ・パンディ)氏らが出席した。
今回のカンファレンスにおける主な発表はマイクロソフトとの協業に加え、KubernetesベースのマルチクラウドPaaS(Platform as a Service)である「Karbon Platform Services」の2つだ。
NutanixをAzure上でも利用可能に
マイクロソフトとの協業により、Microsoft Azureの物理サーバにNutanixのプラットフォームソフトウェアが動かせる「Nutanix Clusters on Azure」を提供。これにより、シームレスなアプリケーション、データ、ライセンスモビリティと、オンプレミスとAzure環境にまたがる統合管理を可能にするハイブリッドソリューションを提供する。
パンディ氏は「より多くのユーザーがリフト&シフトをパブリッククラウドで行いたいという意向を示していたため、われわれのテクノロジーやソフトウェアを使い、ライセンスのポータビリティを担保することにした。これまでNutanixをオンプレミスやサーバ、Amazon Web Services(AWS)だけで利用していたユーザーは、Azure上で同様の環境を構築できる」と述べた。
今回の協業では、Nutanix ClustersやサービスをサポートするAzure上でのNutanix対応ノードの開発が含まれるほか、Nutanixの管理インターフェイスからAzureインスタンスの導入と管理ができるようになる。また、アプリケーションを再設計することなく、プライベートクラウドとパブリッククラウドにまたがりハイブリッドワークロードをシームレスな実行を可能としている。
さらに、両社は販売とサポート面でも協業し、Azureのユーザーは既存のAzureクレジットを使用してNutanixのソフトウェアを購入することが可能なことに加え、Nutanixのユーザーは既存のタームライセンスをNutanix Clusters on Azure上で活用することやAzure Marketplaceを通じて、Nutanixソフトウェアをオンデマンドで使用することが可能となり、Azure内のプライベートクラウドとパブリッククラウド間でのシームレスな移動ができ、共同でカスタマーサポートを提供する。
加えて、Azure Arcのコントロール プレーンを通じて、Nutanix HCI上のサーバ、コンテナ、データサービスをオンプレミスまたはAzure上でも管理を可能とし、ユーザーはAzure Arc対応サーバ、Azure Arc対応コンテナ、Azure Arc対応データサービスの実行やオンプレミスでのAzureクラウド機能の採用、Azureのセキュリティ拡大など、主要なAzureサービスをNutanix環境に拡張できるようになる。
KubernetesベースのPaaS「Karbon Platform Services」
一方、Karbon Platform Servicesは、システムが管理する自動化されたセキュリティを備え、クラウド環境へのマイクロサービスベースのアプリ開発・導入期間の短縮ができるという。
ソフトウェア開発者は同サービスを通じて、オンプレミス、パブリッククラウドおよびエッジ環境において、ターンキー型のマネージドサービスにより、クラウドネイティブアプリケーションを構築・実行しつつ、アプリケーションからインフラストラクチャを切り離すことを可能としている。
米Nutanix APJ地域担当 フィールドCTOのJustin Hurst(ジャスティン・ハースト)氏は「Kubernetesのインスタンスをどのようなパブリッククラウド、オンプレミス環境でも活用できる。選択肢を柔軟性を与え、インフラを超えてアプリケーションレイヤでハイブリッド環境を提供できるようにするものだ」と説明する。
また、IT運用チームにはシンプルで一貫したアプリケーションライフサイクル管理とセキュリティのフレームワークが提供される。同サービスは、Nutanix HCIソフトウェアの統合コンポーネントとしてNutanix Karbonとともに導入されたKubernetesライフサイクル管理の中核的な機能をベースに構築されており、システムが管理する自動化されたセキュリティとマルチテナント性を提供するため、マルチクラウドインフラストラクチャー上で幅広いマイクロサービスベースのアプリケーションを実行することができるという。
同サービスには、マネージドKubernetes(K8s aaS)、CaaS(Containers as a Service)、サーバレスファンクション、AI、メッセージバス、ingress、サーバメッシュ、可観測性、セキュリティサービスなどが含まれる。
運用チームはSaaSベースのインフラストラクチャライフサイクルマネージャを活用することで、基盤となるクラウドを問わず、運用の簡素化し、アプリケーション、データ、セキュリティのライフサイクルを一元管理することを可能としている。開発者はプラットフォームサービス群を活用することで、アプリケーションを一度記述すれば、SaaSベースのアプリケーションライフサイクルマネージャを通じてクラウド環境に導入することができる。
さらに、IT運用チームはクラウド全体のデータやアプリケーションに対して、統一した観測性を持つ一貫したセキュリティとAPIモデルを活用できるほか、サービス群にシステム管理に基づく自動化セキュリティ機能、組み込み型のマルチテナント機能とロールベースアクセス制御(RBAC)が提供される。
Nutanixが標榜する3つの要素
これらの発表は、直近の5年間ではプライベートクラウドが台頭し、その流れに伴いデータセンターが統合されるようになり、単にコンピュートを仮想化するだけでなく、ストレージも仮想化し、コモディティサーバ、ネットワーク上で統合している影響があるという。
パンディ氏は「統合は加速化しており、今後はクラウドがソフトウェアを介して統合されていくようになる。それが統合の肝となり、仮想化が進み、ハードウェア、コンピュート、ストレージ、セキュリティ、ネットワークだけでなく、クラウドのエクスペリエンスも仮想化していく必要がある」と話す。
そのため同社は新たなHCIとしてHybrid Cloud Infrastructureを提言しており、今後はワンクリックのハイブリッドクラウドが必要になるという。
パンディ氏は「現在では多くのクラウドが台頭しており、ワンクリックで統合することが重要だ。だからこそ、再びHCIの意味を問うべきだと考えた。これまで、Hyper Converged Infrastructureとして訴求してきたが、それをHybrid Cloud Infrastructureにシフトしなければならないと考えた。これは、ハイブリッドクラウドインフラでワンクリックにより、クラウドの集約ができる世界への移行を意味する。基盤はVM(仮想マシン)やコンテナ、運用、セキュリティを含む従来のHCIであるデジタルインフラ(Multi Cloud as a IaaS)であり、その上にデータセンターサービスやDevOpsサービス、デスクトップサービスがあり、プライベートクラウド、パブリッククラウド両方で実行できる。これらが統合されることが、Hybrid Cloud Infrastructureの定義だ」と説く。
そして、同社では「Run Better」「Run Faster」「Run Anywhere」を標榜している。Run Betterは次世代HCIのエクスペリエンスの実現、Run Fasterは迅速なアプリケーションの構築・デプロイ、Run Anywhereはアプリケーションを一度構築すればどこでも実行できるというものだ。今後、同社ではこれら3要素を軸に事業を展開していく方針だ。