韓国の2大半導体メーカーであるSamsung ElectronicsとSK Hynixが9月15日からHuawei(華為技術)との半導体取引を中止すると韓国の日刊紙「中央日報」電子版が伝えている。
同紙は、米国のトランプ政権が8月17日に発表したHuaweiに対する追加制裁案に基づく措置としているが、先行して発表されている5月15日付けの措置による取引中止も加味されているものと思われる。米国商務省による5月15日付けの通達は、120日間の猶予ののち、米国外のファウンドリがHuaweiグループが設計した半導体デバイスの製造・納入を事実上禁止したもので、一方の8月17日の通達は、メモリのような標準半導体のHuaweiへの販売を禁止したものとなっている。
これらの規制は、米国製半導体製造装置を使って製造した場合にのみ適用されるが、現実には米国製製造装置を使わずに先端半導体を製造することは不可能である。また、この規制は「禁止」ではなく、Huaweiへの販売に際しては「商務省当局の事前承認(ライセンス)を必要とする」としたものであるが、商務省担当者は、今後は従来のような例外的なライセンスを与えることはしないと断言しており、事実上の「禁止」となっている。このため、SamsungとSK HynixがHuaweiと取引関係を維持することは、特注、標準の区別なくすべての半導体で不可能になっている。
韓国勢にマイナスに働くHuaweiへの制裁
一連の米国商務省によるHuaweiに対する制裁措置により、特にSK Hynixは相当な営業被害を被る可能性が高いと、韓国半導体業界関係者は見ている。同社の2020年上半期の売上高は15兆8050億ウォンだが、そのうち41.2%の6兆5000千億ウォンが中国市場で発生したもので、その多くがHuaweiのスマートフォンやタブレットに搭載されたためである。
一方、Samsungグループの2020年上半期の販売先上位5社を見ると、Apple、独Deuttsache Teleko、Verizon Communications、Tektronix Hong KongそしてHuaweiとなっているが、これはSamsung Displayの有機ELパネルの販売分を含めた順位で、Samsung Electronicsの半導体売上高に占めるHuawei向けの比率は3%ほどであり、SK Hynixほど影響は受けないものとみられている。
韓国業界関係者によると、Samsungは米テキサス州オースチンにファウンドリを設置している関係もあり、2019年にHuaweiが米国商務省のエンティティリストに掲載されて以降、Huaweiとの取引量を減らしてきたとのことである。
韓国勢にプラスに働くSMICへの制裁
米国政府はHuaweiに続き、中国の大手ファウンドリであるSMICをエンティティリストに掲載し、同社への米国半導体製造装置の出荷停止に向けた検討を始めたと複数の米国メディアが伝えているが、この制裁について、Huaweiへの制裁とは異なり、韓国の半導体企業にとってはプラスに働くのではないか、との見方を複数の韓国半導体業界関係者が示している。
Samsungは2030年にファウンドリ市場で世界1位を取るという目標を掲げているが、制裁が決まれば、周回遅れながらキャッチアップを図ろうとするSMICとの差を広げることができるし、韓国の中小ファウンドリとして、中国市場を積極的に攻めているSK Hynixのファウンドリ子会社であるSK Hynix System ICやDB Hitechなども、SMICから同社の顧客を奪いとる可能性がでてくるためだという。
ちなみにSMICの地域別売り上げ比率を見ると、香港を含む中国の割合が3分の2を占め、プロセス別では90nm以上のレガシーデバイスの割合が半分近くを占めるなど、韓国の中小ファウンドリが攻略しようとしている市場や領域と重なっている部分が多い。なおSK Hynix System ICは、韓国国内におけるSamsung Foundryとの競争をさけて、今後は中国・無錫のDRAM量産工場敷地内にファウンドリラインを稼動させ、拡販を図る計画としているという。