東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2020年8月のIT・ソフトウエア業界のM&Aの発表件数は15件で、8月としては2008年以降の13年間では、2018年と並ぶ過去最高となった。取引金額は約253億円で、8月としては2008年以降の13年間では2014年の約94億円を上回り、こちらも過去最高となった。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で件数の減少が見込まれたが、先月に引き続き、15件の高水準を維持したほか、取引金額は200億円を超える大型案件があったため、これまで最高だった2014年の3倍近くにまで膨らんだ。
金額トップはアント・キャピタル・パートナーズの232億円
金額が最も多かったのは投資会社のアント・キャピタル・パートナーズ(東京都千代田区)が、スカラ傘下で営業支援サービスを提供するソフトブレーンをTOB(株式公開買い付け)などで完全子会社化すると発表した案件で、買付代金は約127億円。
さらにTOB成立後にソフトブレーンの減資手続きなどを行い、併せてソフトブレーンに資金提供し、ソフトブレーンがスカラ所有の全株式50.23%を約105億円で自己株取得する計画で、合計の取引金額は約232億円に達する。
ソフトブレーンは1992年に創業し、2000年にマザーズに上場。2005年に東証1部に昇格した。スカラは2016年前後からソフトブレーン株の取得を本格化し、2017年には50%超まで買い増して子会社化していた。
金額の2番目はSHIFTがクラッチ(東京都港区)からWebマーケティング事業を買収することを決めた案件で、取引金額は8億5400万円。
SHIFTは同事業を会社分割より承継する新会社CLUTCH(同)の全株式を取得し、ネット広告代理店事業に参入する。これによってネット広告枠の買い取りから、Webサイト制作関連業務全般までワンストップのサービス提供が可能になるとしている。
金額3番目はエイジアがWebサイト制作用コンテンツマネジメントシステム(CMS)製品を提供するCONNECTY HOLDING(東京都港区)の株式の3分の2超を取得し子会社化することを決めた案件で、取引金額は5億5000万円。
CONNECTY HOLDINGは持ち株会社で、傘下に事業子会社のコネクティ(東京都港区)を持つ。エイジアは同社の子会社化でDX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームの構築につなげるのが狙い。
8月のM&Aは、このほかに10億円未満が2件、1億円未満が3件、金額非公表が7件あった。