NECは9月7日、リモートセンシング技術の1つであるLight Detection And Ranging(LiDAR)を活用した異常検知分析エンジンを開発したと明らかにした。同エンジンは対象物の外観データを可視化することで、異常を検知するものであり、変電設備など異常値に関するデータ学習が困難な設備での活用が期待されている。同社は、東北電力ネットワークとともに技術検証を実施し、漏油などの異常を検知できることを確認しており、東北電力ネットワーク宮城管内の変電所において、同エンジンを用いた巡視点検システムのフィールド検証を10月から実施する。

  • フィールド検証イメージ

    フィールド検証イメージ

国内においては、人手不足が深刻化に伴い、あらゆる産業で先端技術を活用した業務の変革が求められており、そうした中でLiDARを活用することにより、外観データから異常を検出することができ、人手による工数を削減する技術として、設備点検業務をはじめとしたさまざまなシーンでの応用が期待されているという。

具体的にLiDARとは、レーザーなどの光を対象物に照射し、その反射光を捉えることで対象物までの距離や輝度を測定し、対象物の形状・輝度を読み取る技術。測定結果は点群データとなり、対象物を可視化することができるという。

今回、LiDARの技術を元に開発した異常検知分析エンジンは得られたデータに基づき、周辺と異なる輝度、過去データと異なる形状・輝度を分析し、対象物の異常を検知する。LiDARを活用した異常検知の特徴は、異常値に関するデータの学習・蓄積がなくても検知が可能な点にあるため、不具合が発生することが稀で異常値のデータを予め収集することが困難な設備での巡視点検を代替する手段として、活用が期待されている。

LiDARの現場業務への活用可能性を検証するため、同社は昨年8月から福島県南相馬市の東北電力ネットワーク総合研修センターにおいて、研修用変電設備の異常検知にかかる技術検証を実施。営巣、漏油、がいし破損などの異常を模擬した環境を用意し、検証した結果、LiDARから20m以内に設置した模擬異常のすべて(営巣3か所、リード線外れ2か所、がいし破損1か所、漏油5か所)を検知することができたという。

  • 異常模擬環境セットアップの様子

    異常模擬環境セットアップの様子

今後、同社はLiDARを活用した異常検知分析エンジンの改良を進め、2020年度中の製品販売開始を目指す考えだ。