太陽光や風力などの再生可能エネルギー発電は気象条件などの影響を受け、発電量が不安定であることが普及する上での課題とされる。慶應義塾大学などの研究グループが、発電量が不安定になって電気の品質が低下してもこれを回復させることができる発電量の制御法を開発したと発表した。独自に開発したアルゴリズム(手順、仕組み)を活用した制御法は再生可能エネルギーの本格利用に役立つと期待される。
電気を使うさまざまな機器が安定して作動するためには、東日本で50ヘルツ、西日本で60ヘルツという電気の周波数を保って供給されることが重要だ。周波数の安定度が電気の品質に相当する。一方、再生可能エネルギーは天候などに左右され、化石燃料などによる発電に比べ発電量などは不安定。電気の需要と供給のバランスを保ちにくく、落雷などの影響も受けやすいため電気の品質維持が難しいと指摘されている。何らかの対策を講じないと、再生可能エネルギーが普及しても電気の品質が低下し、停電などの原因になる可能性がある。再生可能エネルギーをさらに導入するためには、この電気の品質維持が大きな課題となっている。
今回、慶大などの研究グループは発電所と電力消費地を送電線で結ぶ電力ネットワークに着目。シミュレーション解析により、このネットワークでは発電所ごとに異なる発電量や消費地の需要量に応じて変動する電気の流れ「電力潮流」のバランスが電気の品質に大きく影響することを見つけた。
再生可能エネルギーによる発電量の変動は電力潮流を変える要因になる。ネットワーク全体での総発電量は同じでも、各発電所の発電量が違うと電力潮流のバランスも異なる。研究グループはこうした研究を通じ、電力潮流の状態に応じて各発電所の最適な発電量を求めることにより電気の品質を回復できるアルゴリズムを開発したという。
この仕組みを使えば、発電量制御で課題がある再生可能エネルギーと従来の火力発電などをネットワークで上手に組み合わせることが可能で、再生可能エネルギーの導入が加速すると期待される。
慶大理工学部の井上正樹専任講師(システム制御工学)は「周波数の変動を抑える制御機器などを追加せず、既存設備だけで電気の品質を維持できるのがメリットだ」と述べている。
研究グループは慶大のほか、電気通信大学、米ノースカロライナ州立大学で構成。成果は米国の電気・情報工学専門誌「IEEEトランザクションズ・オン・スマート・グリッド」電子版に8月26日に掲載され、慶大と電通大が同27日に発表した。研究は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)などの一環として行われた。
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