北里大学は9月1日、市場に流通している医薬部外品・雑貨および医療現場で使用されている消毒剤などを用いて行った新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化検証試験の結果を発表した。
同研究は、同大大村智記念研究所 ウイルス感染制御学I研究室の戸高玲子 研究員、芳賀慧 特任助教、澤田成史 助教、片山和彦 教授らによるもの。詳細はメディカルレビュー発行の専門雑誌「感染制御と予防衛生」に掲載されたという。
それによると、今回の研究は、研究チームが4月に発表した市販雑貨品の消毒効果に対する研究を発展させたもの。具体的には、市販のアルコール系消毒剤、ハンドソープ系製品、台所洗剤類、お掃除並びにふき取り系製品、二酸化塩素系製品、次亜塩素酸水系製品、エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、陰イオン系界面活性剤(陰イオン系)、非イオン系界面活性剤(非イオン系)、両性イオン系界面活性剤(両性イオン系)、陽イオン系界面活性剤(陽イオン系)、そして医療現場で使用されている消毒剤を用いて検証を行ったという。
検証方法は新型コロナウイルス感染性粒子3万個の液と、その9倍の試験対象液を混合(3μL+27μL)し、常温で1分間または10分間接触させた後、細胞培養に用いる培地を270μL添加し、細胞に感染させ、6日間の観察を行い、細胞が死滅せず、培養上清のリアルタイムRT-PCRでウイルスRNA量の増加が確認されなかった場合、3万個の感染性ウイルスの感染力を完全に消し去ることができた(完全消毒ができた)と判定する手法を採用したという。
この結果、市販のアルコール系消毒剤は、アルコール濃度が50%以上の製品で、ハンドソープ系、台所洗剤類、お掃除並びにふき取り系製品においても、製品の使用方法にしたがって使用すれば、エタノールも50%以上の濃度であれば、ほぼ完全に消毒可能であることが確認されたという。
また、40%ならびに30%のエタノールでは消毒が不十分であることや、二酸化塩素系、次亜塩素酸水系の製品の場合、製品の劣化がないことを確認してから試験を実施しても完全消毒には至らないことも確認されたという。加えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液については、1分間接触では0.15(1500ppm)以上、10分間接触では0.1(1000ppm)以上の濃度の水溶液で完全に消毒できることが分かったものの、厚生労働省が推奨する0.05(500ppm)濃度の水溶液では、10分間の処理でも消毒が不十分であることも若田という。
さらに。家庭用のハンドソープや中性洗剤、洗濯石鹸の原料として使われる界面活性剤類の場合、1分間接触では、非イオン系アルキルグリコシドが0.1%、両性イオン系アルキルアミンオキシドならびに陽イオン系塩化ベンザルコニウムであれば0.05%および0.1%で、10分間接触では陰イオン系直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが0.1%、非イオン系アルキルグリコシド、両性イオン系アルキルアミンオキシドが0.05%および0.1%、陽イオン系塩化ベンザルコニウムについては0.01%でそれぞれ完全消毒が可能であることを確認したとする。
このほか、医療現場の消毒の参考用として、医療現場で用いられている製品の検証も行ったが、新型コロナウイルスの不活化効果が不十分な製品も散見されたことから、研究チームでは医療機器の消毒方法の見直しが必要だと思われる結果となったと説明している。
なお、研究チームでは、洗剤系の製品は、ほとんどの製品で十分な消毒効果を確認できたことから、こうした知見を活用して、日常生活上、新型コロナウイルスの感染を最小限に抑え、感染制御を確実に実行するために活用してもらえればとしている。