本田技術研究所(ホンダ)とトヨタ自動車は8月31日、トヨタの開発した燃料電池バスと、ホンダの開発した可搬型外部給電器・可搬型バッテリーを組み合わせた移動式発電・給電システム「Moving e(ムービングイー)」を構築、いつでも・どこでもクリーンな電気を必要とする人に届ける実証実験を開始することを明らかにした。
自動車メーカー各社は、排ガス規制の強化などを背景に脱ガソリンに向け、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などの開発にしのぎを削っている。トヨタとホンダは2010年に設立された燃料電池の普及拡大を目指す技術研究組合「FC-Cubic」にて、燃料電池の活用について模索しあってきた間柄で、台風や地震による大規模災害時に伴う停電時などにおける燃料電池の活用などを模索してきた。
そうした取り組みのなか、移動式のシステムを構築することで、災害時には災害対応として被災地で電力供給を行う一方、平常時でもイベントなどにおける日常的な活用が可能な「フェーズフリー」という概念を実現するシステムである移動式発電・給電システム「Moving e」の発案にいたり、今回、両社が協力して実証実験を行うことを決めたという。
「Moving e」は、トヨタの燃料電池バス「トヨタFCバス」をベースに、高圧水素タンクの貯蔵効率の向上とタンク本数の増加を図ることで、水素貯蔵量を従来の約24kgから約47kgに増加(電力供給量は最大約490kWh。航続距離も従来の200kmから400kmに増加)させたほか、外部電源給電口を2口に増設(9kW×2。従来は9kW×1)するなど、より燃料電池としての利便性を向上させる改良が施された「CHARGING STATION」と、ホンダのV2L(Vehicle to Load)対応可搬型外部給電器「Power Exporter(パワーエクスポーター)9000」、可搬型バッテリー「LiB-AID(リベイド)E500」、そしてアジアで展開している電動バイクに搭載されているバッテリー「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」を搭載することで給電を可能にするコンセプト充電・給電器「Honda Mobile Power Pack Charge & Supply Concept(チャージアンドサプライ コンセプト)」で構成され、CHARGING STATIONにすべての機材を積み込んで必要な場所へ移動し、電気を供給することを可能としたものとなっている(各充電・給電システムの搭載数はLiB-AID E500×20、Honda Mobile Power Pack Charge & Supply Concept×36、Power Exporter 9000×2としている)。
両社が掲げるコンセプトは、「再生可能エネルギーを運び、配り、すべての人に使ってもらうということ」、というもので、この考えを前提に、両社の強みの技術を持ち寄って作りあげることを目指しているとする。
なお両社では、具体的な実証実験の開始時期は2020年9月としているが、実施エリアなどについては、燃料電池バスに対応した水素ステーションが設置されている場所から100km程度までの場所を目安としており、さまざまな用途で利用してみて、そこで生じた課題の解決を図り、実用化を目指していきたいとしている。