総務省が2020年度から新規に実施する情報通信技術の研究開発課題である「多言語翻訳技術の高度化に関する研究開発」の委託先として選定を受けた凸版印刷、情報通信研究機構(NICT)、マインドワード、インターグループ、ヤマハ、フェアリーデバイセズの6者に、社会実証を担当する団体として東日本電信電話(NTT東日本)、ソースネクスト、KDDIテクノロジーの3社を加えた計9者は8月28日、「総務省委託・多言語翻訳技術高度化推進コンソーシアム」を設立した。

新コンソーシアムは、総務省が3月31日に公表した「グローバルコミュニケーション計画2025」の推進のため、既に実用化している逐次通訳の技術を同時通訳の技術にまで高度化し、ビジネスなどの場面での利活用を可能にすることを目指す。

  • 2025年における同時通訳技術の利活用イメージ

現在の音声翻訳技術は逐次通訳であり、発話者が一区切りの発話を完了したところで発話を停止し、一区切りの文章を通訳するものという。 これに対して同時通訳は、話者の発話が終了する前から通訳者が発話の一部を訳出することを繰り返すものとのこと。

同時通訳は、逐次通訳と比較して、発話内容を翻訳して相手に伝わるまでの時間を短縮でき、さらに発話者が発話を中断する必要も無いというメリットがあるという。

しかし、現在の音声翻訳技術は同時通訳には対応しておらず、加えて文脈などの補足情報も反映できず、人間の同時通訳には遠く及ばないとしている。

同コンソーシアムでは、AI(人工知能)による同時通訳技術の研究開発を行い、社会実装に向けた実証と改良を推進する。

同コンソーシアムは、主に以下の3点の研究開発及び社会実装を進めていく。

1.自動同時通訳基盤技術の研究開発
2.自動同時通訳システム技術の研究開発
3.自動同時通訳システムの社会実装

自動同時通訳基盤技術の研究開発では、1)入力分割・要約・翻訳出力最適化技術(担当はNICT)、2)多様な情報源を利用する通訳精度向上技術(担当はマインドワード)、3)自動通訳性能評価尺度の確立(担当はインターグループ)をそれぞれ進めていく。

自動同時通訳システム技術の研究開発のうち自動同時通訳ユーザーインタフェース(UI)技術では、まずシステム利活用要件に応じた総合検証技術(担当は凸版)を進め、2020年度は通訳ニーズが高いと思われる、アバター対話(担当は凸版)、情報伝達(担当はNTT東日本)、対面・遠隔会話(担当は凸版及びソースネクスト)、遠隔協業(担当はKDDIテクノロジー)の各シーンにおいて社会実証を実施する。

また、入力音源分離技術(担当はヤマハ)及び、自動同時通訳プラットフォーム技術(担当はフェアリーデバイセズ)の研究開発を進める。

自動同時通訳システムの社会実装では、自動同時通訳基盤技術及び自動同時通訳システム技術の研究開発の成果を民間企業が製品化・事業化するなど、自動同時通訳システムの社会実装につながるように進めるため、自動同時通訳技術が根付き利活用されるモデルを検討、試行するという。

同事業に期待する効果として、創出した自動翻訳の技術とシステムにより、国内外の多種多様なシーンでの同時通訳ニーズに応え、社会経済活動において言葉の壁を感じさせない環境を創出することで、企業などの労働生産性の向上や働き方改革の推進、利用者利便の一層の増進への寄与を挙げている。