徳島大学は8月25日、A型インフルエンザウイルスの不活化に最適な紫外線を決定する新たな指標「RAE」を開発したと発表した。
同成果は同大大学院医歯薬学研究部・予防環境栄養学分野の高橋章 教授、馬渡一諭 講師、上番増喬 特任助教、下畑隆明 助教、児島瑞基 大学院生、野中理沙 大学院生、Thi Kim Ngan Bui大学院生、同大学院社会産業理工学研究部の榎本崇宏 准教授、芥川正武 講師、木内陽介 顧問(現 徳島大学名誉教授、研究支援・産官学連携センター客員教授)、京都府立医科大学感染病態学教室の中屋隆明 教授、大道寺智 講師、日本フネン 研究開発部の和田敬宏氏、岡本雅之氏、伊藤浩氏、東條健治氏らによるもの。詳細は学術雑誌「Microorganisms」にオンライン掲載された。
世界中で感染拡大が続く新型コロナウイルスが収束する気配が見えない一方で、冬が近づき、インフルエンザの感染も併せて危惧されるようになっているが、こうしたウイルスに紫外線(UV)を照射することで不活化できるといった研究報告が各地から出されるようにもなってきた。
LEDは従来、紫外線殺菌灯として使われてきた低圧水銀ランプ(UVランプ)のように幅広い波長をカバーするのではなく、特定の波長(ピーク波長)を発光させることができるといった特徴があるものの、現在、紫外線を照射するLEDはさまざまな波長のものが発売されており、どのピーク波長がウイルスの不活化に対し効果的であるのかといったことは調べられてこなかった。
そこで研究グループは今回、日亜化学の協力のもと、ピーク波長の異なる7種類のUV-LED(365nm、310nm、300nm、290nm、280nm、270nm、260nm)とUVランプを一定条件(放射照度:2.4mW/cm2、2秒間)のもと、A型インフルエンザウイルスの溶解に照射することで、不活化効果の比較を行ったという。その結果、260nmのUV-LED による照射が最もっとも不活化効果が高く、UVランプと比べても有意に高くなったという。
さらに、研究よりUVの照射とウイルス力価の低下(不活化効果)がウイルスのRNAの傷害性と相関性があることも判明。そこで、UV光源の発光スペクトルとウイルスRNA の吸収スペクトルと相関性を示した係数「RAE」を考案したという。
同指標をもとに、さらなる不活化効果の向上を図るため、3種類のUV-LEDを組みあわせたハイブリッド型UV-LEDを作成したところ、同じ条件で、260nm UV-LEDと比べてより高い不活化効果を示したほか、H1N1亜型のみならず鳥インフルエンザ(N6H2亜型)にも効果が確認されたという。
研究グループでは、UV-LEDなどの紫外線光源のRAEを高くする、つまり光源の発光スペクトルをウイルスRNAの吸収スペクトルに近づけることで、紫外線照射によるウイルス不活化効果を高めることができる可能性が示されたとしている。
なお、研究グループでは、最近の研究から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と同じベータコロナウイルス属の季節性コロナウイルス「HCoV OC43」がはA型インフルエンザウイルスよりもUV-LEDの照射で不活化されやすいことがわかってきたとのことで、今後はRAEが新型コロナウイルスや他の病原ウイルスへ応用可能か検討を行うとともに、今回開発した技術の用途拡大を目指していきたいとしている。