半導体市場動向調査会社の仏Yole Développementは、子会社のリバースエンジニアリング企業System Plus Consultingと協力し、Samsung Electronicsのスマートフォン「Galaxy」の最近の代表的な5機種を分解し、搭載カメラの多眼化傾向の分析を行ったと発表した。

それによると、同社は独自のCMOSイメージセンサ技術を発展させることで、ピクセルの微細化によるコスト低減と解像度ならびに低消費電力性能の向上の両立を実現しているほか、同社のマルチカメラ化戦略は、技術的には必ずしも直線的に発展させてきたのではなく、さまざまな革新的な試みを行っていることが見えてきたという。 今回、分解の対象となったのはGalaxy S7、Galaxy S8、Galaxy S9+、Galaxy S10+、Galaxy S20 Ultraの5機種。

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    左からGalaxy S7、Galaxy S8、Galaxy S9+、Galaxy S10+、Galaxy S20 Ultraの内部写真と取り出された前面ならびに背面カメラモジュール (出所:System Plus Consulting)

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  • Samsung製CMOSイメージセンサチップのパッケージ例とSamsung製CMOSイメージセンサチップの断面写真例 (出所:System Plus Consulting)

また、リアカメラモジュールをAppleのiPhoneとGalaxyで比較すると、GalaxyはHuaweiなど他のAndroidスマホとほぼ同じ構造を採用しているが、iPhoneとはCMOSイメージセンサチップの実装が異なっていることも分かったという。具体的には、iPhoneはセラミック基板とフレキシブル基板を使用し、CMOSイメージセンサをフリップチップ実装しているが、Galaxyではフレキシブルリジッド4層基板に実装されており、よりシンプルな構造を採用しているという。

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    AppleのiPhoneとSamsung/HuaweiをはじめとするAndroid系リアカメラモジュールの断面模式図比較 (出所:Yole Développement)

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    Samsung Galaxyのカメラモジュールの断面写真例 (出所:System Plus Consulting)

スマホは今後、リアもフロントも多眼化へ

Yoleのフォトニクスおよびセンシング担当技術・市場担当アナリストのRichard Liu氏は、「Samsungに限らず、ハイエンドの旗艦スマートフォンに共通する傾向としてリアカメラは2015-2016年ころからデュアルカメラに移行し、2018年-2019年ころにトリプルカメラへと発展。今後はクワッドカメラに向かっていく見込みである。一方のフロントカメラも今後は数が増えていくとみられる。カメラモジュールは、ズームや広角、ToFなどの機能が次々と付加される傾向にあり、将来的にはスマホ1台当たり9個のカメラが搭載されるかもしれない」と述べている。

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    スマートフォンサプライヤの旗艦スマートフォンの前面および背面カメラ個数増加のシナリオ (出所:Yole Développement)

なお、Yole Développementのフォトニック・ディスプレイ部門のプリンシパル・アナリストであるPierre Cambou氏によると、「スマホのトレンドとしては、カメラの数を増やすとともに、解像度の向上を中心に、カメラの機能向上を図ることで製品としての競争力を高めようとしている。そうした動きを背景に、高品質なCMOSイメージセンサは2019年末、その生産能力を超え、供給不足と値上げをもたらした。こうした動きもあり、カメラモジュール市場は今後5年間、2桁成長が続くものとみられる」と今後もスマホカメラ関連市場が成長を期待できる市場であるとコメントしている。