矢野経済研究所は8月25日、国内企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組み状況について調査し、調査結果を発表した。
同調査ではDXを、革新的な製品やサービスの開発、ビジネスモデルの変革、イノベーションを実現する「革新的な取り組み(攻めのDX)」、基幹システムの刷新やテレワーク対応、既存業務効率化、業務プロセス・組織風土・企業文化を変革する「IT刷新(守りのDX)」の2つに分類。2020年5月~7月の期間、国内の民間企業および公的機関523社・団体に対し、郵送アンケート調査が行われた。
アンケートでは、革新的な取り組み(攻めのDX)への意欲とIT刷新(守りのDX)に対する意欲、それぞれについて8段階の数値(「8」が積極的、「5」が普通、「2」が消極的、初めて聞いたを「1」としている)で回答を得た。数値が大きいほど積極的であることを示している。
調査結果から、国内の民間企業および公的機関523社の平均値が、それぞれ攻めのDXが3.37、守りのDXが3.78であることが判明し、どちらも「普通」を示す5を下回り、企業のDXに対しての消極的な姿勢が明らかになったとしている。
また、わずか0.41ポイントではあるが、守りのDXへの意欲が攻めのDXへの意欲を上回っていることや、守りのDXについて初めて聞いた比率が2.3%(12社)に対し、攻めのDXについて初めて聞いたと回答した比率は20.5%(107社)となっていることを受け、同社は、日本の平均的な企業は革新的な取り組みへの意欲が乏しいと考察している。
同社によると、攻めのDXへの意欲や意識の高さについて、ポテンシャルが高いのはサービス業であったという。サービス業の中でも運輸や建設業、医療分野などでDXへの取り組む意欲が高いが、飲食業はSNSを活用したマーケティング、集客やキャッシュレス決済などにとどまっていることが多いとのこと。
また、不動産業はこれまで余りDXが進んでこなかった業種の1つだが、コロナ禍で対面営業が困難であったり、内見が減少したり、さらにはテレワークに起因する事業所賃貸契約の解約や家賃減額など、環境が大きく変わり始めたりしたことから、同社は、攻めのDXに対するポテンシャルが膨らみ始めたと推測している。